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カブトムシの飼育方法も学べるカブトムシ目線のお話。
カブトムシのカブは食いしん坊。蜜をなめていると男の子に掴まってしまいました。かごに入れられたカブは体をたくさん触られ、餌ももらえず庭にほったらかされてしまい…
捕まえられた生き物の気持ちを考えて大切に育てたくなりますね。
ここは夏の森。夏になると人間の子どもたちが虫取りをしに森へやってきます。虫たちは捕まらないように、毎日逃げたり隠れたり。でも食いしん坊のカブトムシのカブだけは違いました。甘い蜜の匂いをクンクンクンクン。
「たっぷりの蜜は人間の罠かもしれないよ!」友達が言いますが、カブはブーンとクヌギの木へひとっ飛び。甘い蜜を夢中でなめていると、突然ヒョイッと体が浮き上がりました。「カブトムシ、ゲット!」カブは男の子に捕まってしまいました。
狭いかごに入れられたカブは「イタタタ!そんなにかごを振り回さないでよお!!」男の子が虫かごをブンブン振り回しながら走るので、かごの中でツルツルと滑って、そこら中に頭をぶつけてしまいました。
家に帰った男の子は、カブをかごから出すと、「みてみて!カブトムシ!」みんなに見せて回りました。「やだやだ!触らないで!」カブがジタバタ嫌がってもお構いなしです。ずっと触られていたカブはもうクタクタ。「疲れたしお腹すいたな…」
夜、カブはなにもない狭い虫かごの中で疲れてぐったりしていました。「明日は蜜舐められるかな…」でも次の日になっても、その次の日になっても、カブは何も食べられませんでした。男の子はカブに飽きたのか、虫かごは庭で放ったらかしにされていたのです。
「このかごから出なくっちゃ!」カブは夜中、最後の力を振り絞ってかごから抜け出すと、森の方へと飛び立ちました。「あった!蜜だ!」クヌギの木を見つけたカブは、夢中で蜜をなめました。いつまでもいつまでもなめていると…。
また体が浮き上がりました。「立派なカブトムシ捕まえた!」カブはまた、別の男の子につかまってしまいました。「ああ…またか…」カブはため息をつきながら狭いかごへ入れられました。
でも今度は、そーっとそーっと男の子が歩くので、カブは頭をぶつけないで済みました。男の子の家につくと、カブは大きなケースに入れられました。「とっても広いし、僕の大好きな土と落ち葉がある!森にいたときと同じだ!」カブは嬉しくてふかふかの土の上をあるき回りました。
「なんだか…甘くていい匂い…」カブがクンクンすると、見たことのないものが目の前に現れました。「なんだこれ?」ペロッと舐めてみると「美味しい!」カブは男の子が用意してくれたカブトムシ用のゼリーをあっという間に食べてしまいました。
カブはいつでもご飯が食べられて、安心して寝られる土も落ち葉もある新しい場所をとても気に入りました。飛べないことはちょっと嫌でしたが、かごの中でブンブン飛べば、それで気持が落ち着きました。
しばらくしたある日、カブのかごにメスのカブトムシが入ってきました。ひと目で好きになったカブは、メスのカブトムシに結婚を申し込みました。最初は嫌がられたカブですが、無事に結婚することができると、すぐにたくさんの卵が産まれました。
「僕は捕まったのがこの男の子でよかった。素敵な家に美味しいご飯、お嫁さんに子供まで作れるなんて思わなかった。」カブは男の子がお世話をしてくれたおかげで、森にいなくても、元気に長生きすることができたのでした。
おしまい