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春に咲く桜のお話。
まだつぼみの桜達は春を今か今かと待っています。せっかちな桜はまだ寒いのに咲いてしまいます。暖かくなる頃、ようやくぽつりぽつりと咲き始め…
春を感じる桜目線の物語。
少しだけ暖かくなり始めたころ、桜の木にはたくさんのつぼみが膨らんでいました。つぼみたちはみんな、咲きたいのを我慢していまかいまかと春を待っています。
「そろそろ良いかしら?」桜のつぼみが言いました。「ポカポカしてきたし、良いんじゃないかな?」隣のつぼみが言いました。「まだ冬だよ。もう少し待とうよ。」その隣のつぼみが言いました。
おひさまがポカポカ気持ちのいいある日、一つのつぼみが寝ぼけて咲いてしまいました。「あ、ボク間違えて咲いちゃった。」他のつぼみが「まだ風が冷たいよ」「あわてんぼうだね」みんなクスクス笑いました。
そんな桜の木の下には、たんぽぽが咲いていました。たんぽぽは寝ぼけた桜のつぼみが咲いた時、一緒に咲きました。「みんなも早く咲いたらいいのにー」綺麗な黄色いたんぽぽは桜のつぼみたちを見上げて言いました。
たんぽぽが咲いて5回めの朝、黄色い花びらはふわふわの綿毛に変わっていました。ふわふわ綿毛になったたんぽぽ達は、「つぼみさん、またね」「綺麗な桜の花、咲かせてね」空へとふわふわ上がっていきます。
たんぽぽの綿毛と一緒に、先に咲いてしまった桜の花びらもふわりと空へ上がりました。「また次の春に会おう!」たんぽぽと桜の花びらはつぼみたちとお別れして、風に乗ってそれぞれ行きたい場所へと旅立っていきました。
それから少して、風が暖かくなり始めると「もういいかな」「ボク、咲いちゃおうかな」「私もそうする」お日様に暖められたつぼみたちから順にぽつぽつと、先に花を咲かせ始めました。
少しずつ桜が咲き始めたちょうどその頃、近くの幼稚園で男の子が卒園式をしていました。「ぼく、立派な一年生になるよ!」男の子は幼稚園の先生達にお別れをしながら約束をしました。
それから少しした、お日様のポカポカする日が増えた頃、「みんなそろそろだよ」「この日を楽しみにしてたんだ」咲きたくて仕方のなかった桜のつぼみたちは一斉に花を咲かせました。
満開になった桜の木の下で、この前の男の子がソワソワうきうきしていました。「今日から一年生だね」パパとママの真ん中で、男の子はちょっと恥ずかしそうにピースをしています。
「はい、チーズ」男の子の家族は桜の木の下でパシャリと記念写真を撮りました。今日は男の子の入学式だったのです。満開に咲いた桜の花達は、おめでとうの気持ちを込めてとびきりの笑顔で一緒に写真に写りました。
おしまい