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鬼たちは豆を投げられるのが嫌い。何も悪さをしていないのに…と冬になると落ち込む鬼たちは、人間と話し合うことになり…
節分の意味もわかる、鬼のお話。
ここは鬼ヶ島。鬼たちは新年があけるとアチラコチラで立ち話をはじめます。「今年もこの季節がやってきたなぁ…。」「ほんとほんと、はやく終わって欲しいもんだ。」鬼たちは冬が大嫌いでした。おじいちゃんのおじいちゃんのそのまたおじいちゃんが、桃太郎とやらにやられてからというもの、鬼はすっかり嫌われ者、冬に姿をあらわそうものなら、豆を投げられて外に行けと人間たちに怒鳴り散らされるのです。
おとなしく鬼ヶ島で暮らしている鬼たちはたまったもんじゃありません。「今はもう悪さなんてしていないのになぁ…」「どうして冬になると豆なんて投げつけられなきゃならんのだ。」「人間と仲良くなりたいなぁ。」
「今年こそ、豆を投げるのをやめてもらって、仲良くなろうじゃないか!」人間と仲良くなりたかった鬼たちは、さっそく人間の暮らす島へと船ででかけました。
島へ着くと「うわー!鬼がやってきたー!鬼はー外!!」子どもたちがさっそく豆を投げてきました。「イテテテ…!」「こりゃたまらん!」鬼たちは豆を投げられ逃げ回ります。
なんとか村長の家へたどり着くと「長旅ご苦労さん」村長は笑顔で迎えてくれました。囲炉裏を囲んでみんな席につくと、早速話し合いが始まります。
「俺たちを嫌いだからって、豆を投げるのはやりすぎじゃないか?」「そーだそーだ。ものすごく痛いんだぞ。」「豆を投げるのは勘弁しとくれよ。」鬼たちが口々に言うと、村長は驚いた顔になりました。
「なにも嫌いで投げてるわけじゃないんだ。これは節分と言ってな、人間の健康と幸せを願って2月3日に豆をまく、季節の大切な行事なんじゃ。」「なぜ俺等に投げるんじゃ?」鬼たちは首をかしげました。
「悪いものを退治するという意味で鬼に豆を投げるんじゃ。鬼は桃太郎のときにたくさん悪さをしたからかのぉ、昔から悪いことは鬼のせいってことになっとるんじゃ。」「そんな~、、、」鬼たちは顔を見合わせてがっかりしました。
「でも最近はめっきり悪さもしていないし、鬼に豆を投げるのをやめるよう、村のみんなに伝えよう。」村長が言うと、ある鬼が言いました。「そしたら節分はどうやって健康と幸せを願うんじゃ?」みんなは「う~ん」と考え込みました。
「よし決めたぞ。」鬼の一人が立ち上がりました。「節分には思いっきり俺たちに豆をぶつけてくれ。人間の健康と幸せをわしらも祈ろうじゃないか。でもそのかわり、その日以外は豆は投げないでくれ。これからはみんなで仲良くやっていこう。」鬼の提案にみんなは拍手で賛成しました。
それからというもの、鬼は悪さもしないし怖くもないと知った村人達は、鬼を見かけても2月3日の節分以外に豆を投げることはなくなりました。それどころか、鬼に仕事を手伝ってもらったり、ごちそうを振る舞ったりするほど仲良くなっていきました。
鬼たちも人間の健康と幸せを願う節分が楽しみになり、年が明けるといつも「今年の節分はどうやって怖がらせようか」とワクワク立ち話を始めるようになりました。節分は鬼を退治する日ではなく、鬼が人間の健康と幸せを願いにやってくる、そんな日だったら良いですね。
おしまい