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お話・読み聞かせ , ehonly , えほんりー , 絵本 , 読み聞かせ
お化け屋敷で出会った、昔ながらのおばけたちと男の子のお話。
いつもの道に突然現れた古いお化け屋敷。入ってみると出てくるのは古風なおばけばかりです。怖くなって走って外に出ると「私たちを忘れないでね」という声が聞こえました。振り返るとお化け屋敷が消えていて…。
昔からのものを大切にしたくなります。
夏の夕方、太郎君は公園で遊んだ帰り、いつも通る空き地に大きなお屋敷が建っているのを見つけました。「あれ?こんなに大きなお屋敷いつできたんだろう?」
近づいてみると、扉には『おばけやしき』と書かれたボロボロの看板がついています。「おばけやしき~?なんだか面白そう!」太郎君はおばけなんてちっとも怖くありません。
キィっと扉を開けると、中は絵本で見た昔話のお屋敷のようでした。広い玄関の先に畳の部屋がいくつもつながっています。ボロボロのそのお屋敷は、雨戸が全部しまっているせいか、まだ昼間なのに薄暗くて、どこからかひんやりした風が吹いてきました。
「誰かいませんか~?」返事はありません。「もしかして本物のお化け屋敷!?」太郎君はワクワクどんどん中へ進みます。「お邪魔しま~す!」靴を脱いで部屋へ入ると、またどこかからひんやりした風が吹いてきて、たろうくんの髪の毛を揺らしました。
「すみませ~ん」太郎君は様子を伺いながらいろんな部屋を覗きます。そのままお屋敷の奥まで来ると、「なーんだ、なんにもないじゃん。」太郎君はがっかりして玄関へ引き返すことにしました。すると「遊んでけ~…」どこからか声がします。
「誰かいるの?」太郎くんがあたりを見回すと柱の陰からにゅるっとながーい首が見えました。「んー?」太郎君がよーく目をこすって見てみると…長い首の先には不気味に笑っている女の顔がありました。「うわー!ろくろっ首だー!」
太郎君は慌てて逃げようとしましたが、ドン!と何かにぶつかりました。 見上げてみるとニヤリと笑う巨大な鬼が立っています。「遊んでけ~…」「でたー!!!」太郎君は鬼をよけて全力で走りました。すると今度は目の前に何かが飛んできました。
その何かは、しっぽが2つに割れている猫又でした。不気味な笑顔でニャ~と鳴くと太郎君は「ぅうわぁぁぁl!!」泣きそうな声で叫びながら逃げ出します。その姿をゲラゲラ笑いながら座敷わらしが見ています。周りには火の玉もブンブンと飛んでいました。
やっと玄関までたどり着いた太郎君。慌てて外に出ると、後ろから「私達を忘れないで~!!」おばけたちの叫び声が聞こえました。 思わず太郎君が振り返ると、今いたお屋敷がどこにもありません。そこは雑草がぼうぼう生えたいつもの空き地でした。
「あれ…?」太郎君が首をかしげていると、ぽつんと一冊の絵本が落ちているのを見つけました。 「なんだろこれ…」太郎君はボロボロの絵本を拾い上げました。『昔話のおばけたち』と書いてあるその本をめくると、さっき出会ったおばけたちが沢山書かれていました。
太郎君はさっきまで怖かったのに、なんだか不思議な気持ちになりました。大きく息を吸い込むと「大丈夫、忘れないよ!」空き地に向かって大きな声で手を振って、家へと走り出しました。
おしまい