あらすじ…

ウミガメのニコちゃんの成長物語。

ニコちゃんは砂の中で産まれました。仲間と一緒に砂から出ると、生きる為必死の毎日が始まります…。

仲間の大切さ、自然の厳しさ、ウミガメの生体が学べるお話。

ウミガメの赤ちゃん

みんなが寝静まった夜。１匹のウミガメが浜辺にやってきました。穴を掘り、ゆっくり時間をかけて１００個以上の卵を産みます。産み終わったウミガメは卵がある穴を砂で隠すと、静かに海へと帰っていきました。

しばらくたったある日の夜、卵からどんどん赤ちゃんガメがでてきました。温度の高い場所にいた卵からは女の子、低い場所にいた卵からは男の子。みんなモゾモゾ砂の中で夜になるのを待ちます。「そろそろ土が冷たくなってきた。」「もう夜になったんじゃないか？」「よし！外へ出るぞ！」

みんなが外へ出ようとすると、「まって！まだ１匹産まれてない！」モゾモゾ動いている卵から「うんしょ…うんしょ…」殻をやぶって女の子のカメがでてきました。「この子で最後だな！」「君は１２５番目にうまれたから…ニコちゃんだ！」

「よーし！急いで海まで出るぞ！」ニコちゃんは産まれたばかりで何がなんだかわからないまま、みんなの真似をして砂をかき分け穴を出ました。「あっちが明るいから海の方だ！」急いで海に向かうみんなに、ニコちゃんも必死に着いていきます。

周りを見ると、カニや鳥に食べられてしまう子、人間が捨てたゴミのせいで先に進めない子、海までたどり着けない子達がたくさんいました。「ニコちゃん、頑張って！」「急がないと食べられちゃうよ！」みんなに声をかけられながらニコちゃんは急いで海へ向かいました。

無事に海に着くと、今度は押し寄せてくる波が待っていました。波に逆らって泳ぐのはウミガメの赤ちゃんにはとても大変です。でもここも急いで泳がないと、海の中から魚が食べようと狙っているのです。「ニコちゃん、大丈夫！？」「ニコちゃん、止まっちゃだめだよ！」

みんなは最後に産まれたニコちゃんが心配でたまりません。ニコちゃんもみんなに置いていかれないように一生懸命水をかいて泳ぎます。ウミガメの赤ちゃんは、産まれた瞬間からしばらくはとても力強く動けるのです。お腹も空きません。だから朝が来てまた夜がやってきても、ニコちゃん達は泳ぎ続けていました。

100匹以上いた赤ちゃんガメは、いつの間にか半分よりもっと少なくなっていました。鳥や魚に食べられたり、はぐれてしまったり、疲れて泳げなくなってしまったり…。ニコちゃんは仲良くなったエマちゃんと一緒に遠くへ遠くへ泳ぎました。

どれくらい日にちが過ぎて、どれくらい泳いだでしょうか。少し大きくなった仲間はみんなそれぞれ行きたい所へ泳いでいきました。ウミガメは世界中を旅するカメなのです。２匹だけになったニコちゃんとエマちゃんは、のんびり藻に絡まりながら海に漂っていました。

「１０年くらいして、私達が赤ちゃんを生む時はね、あの産まれた砂浜に帰って生むのよ。もしニコちゃんと私が離れる事があっても、きっと１０年後、あの砂浜でまた会えるわ！」「帰り道…わかるかなぁ…」ニコちゃんは心配になりました。「ニコちゃんいつもぼーっとしてるから、迷子になっちゃうかもね！でも大丈夫、ニコちゃんが来るまで待ってるから！」エマちゃんは笑って言いました。

その日は風がとても強かったので、２匹は波にさらわれないように寄り添って寝ました。でも次の日朝目が覚めると、エマちゃんの姿はありませんでした。風で流されてしまったのでしょう。でもニコちゃんは悲しんでなんかいられません。食べられそうになっても、捕まりそうになっても、１０年後にまた会うために必死に生きました。

それから１０年後、ニコちゃんは産まれた砂浜の近くまでやってきました。砂浜からピカピカと光が見えます。沢山の人間の話し声も聞こえます。ウミガメが卵を産むところを人間が見に来ているのです。ずっと海で生きてきたニコちゃんは、そんな砂浜に上がるのが怖くてたまりませんでした。「人間が居なくなって安心できるようになったら上がろう…」海の中でじっと静かになるのを待ちました。

海が冷たくなった頃、やっと静かになりました。ニコちゃんは砂浜に上がり穴を掘ります。ゆっくり卵を産むと、砂で穴を隠しました。「エマちゃん、会えなかったな…。元気かな…。」海に戻ろうとすると「ニコちゃん！！」岩の影から懐かしい声がしました。振り返ってみると、そこにはエマちゃんがいました。

「エマちゃん！！」２匹は涙を流して喜びました。お別れしてから今日までのはなしを、海を泳ぎながら沢山しました。２匹がずっとずっとおしゃべりしている間、砂浜ではまた、ウミガメの赤ちゃんがうまれ、新しい物語が始まろうとしていました。

おしまい

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