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時計を動かしているこびとのお話です。
時計を動かしているこびとのチクとタク。1分ごとに針を動かすチクは、仕事の少ないタクに楽ちんだと言ってしまいます。それを聞いたタクはうつむいてどこかへ行ってしまい、チクは短い針も動かすことになり…。
協力することの大切さ、思いやる心が学べます。
ここは町の時計屋さん。そっと耳をすますと、お店の一番奥に置かれた古い時計から何やら声が聞こえます。「さあ、1分たった。よいしょ!」こびとのチクは古い時計の長くて細いほうの針をチックン、と動かしました。
「そろそろ1時間たつぞ」もう一人のこびとのタクが、のそりと立ち上がりました。「タックン」タクが短くて太いほうの針を動かすと、時計は8時になりました。
この古い時計はチクとタクの二人のこびとが動かしていたのです。
「ふうー。疲れた。でも、がんばらなくっちゃ!チックン」チクは汗をかきながら針を動かし続けます。
「今日こそ、だれかに買ってもらえるかな?早くだれかのお気に入りの時計になりたいなあ」タクは針の上に座りながら言いました。
「開店時間が待ち遠しいね。まだ9時にならないの?」チクは針を動かしながら、ソワソワとタクに聞きました。「まだまだ」
タクは首をふります。待ちきれないチクが「ねえ!まだ?」すぐにまた聞きくと
「まだまだ。チクはせっかちだなあ」タクは呆れたように言いました。チクは少し腹をたてて「針を動かすのがめんどうで、うそを言っているんじゃないの?」と言いながら、フンッとついついそっぽを向いてしまいました。
「うそなもんか!知ってるだろう。チクの長くて細い針が時計を一周しないと、1時間にはならないんだ。1時間は長いんだよ!」
タクもフンッとそっぽを向きました。
腹を立てていたチクは「じゃあ、まだまだじゃないか。いいよな、タクは楽ちんで。1時間に一回しか働かなくていいんだから」
と言ってしまいました。するとタクは、悲しそうにうつむいてどこかへ行ってしまいました。
タクがいなくなったまま、朝の9時になりました。お店の開店時間です。
時計屋のおじいちゃんがお店を開けようとしたその時、
「おや?」おじいちゃんが首をかしげました。
時計は8時をさしたまま止まっていました。「とうとう止まってしまったかい」
おじいちゃんはしょんぼりしながら、お店の奥へ入っていきました。
9時を過ぎてしまったことを知ったチク。「ぼく一人でだって、針を動かしてやる!」さっそく短くて太い針を動かそうとしました。でも……。
「よいしょ!よいしょ!ん〜なんて重たいんだ!」針は重たくて、びくとも動きません。
「よいしょ!よいしょ!」チクは今までよりもっともっと汗をかきました。「短くて太い針が、こんなに重たいなんて知らなかったよ……。このままじゃ、だれにも買ってもらえない!ええーん」チクは泣き出してしまいました。すると
「ごめんね…。」チクの泣き声を聞いたタクが戻ってきました。
「やっぱり、二人でだれかのお気に入りの時計になりたいもんね」泣いているチクをなでながらタクが笑うと、「ごめんね…」チクもあやまりました。
タックン。チックン。チックン。針が9時をさし、時計はいつもどおり動きだしました。
「おや! なおっているぞ」時計屋のおじいちゃんがお店の奥から戻ってきました。手には、たくさんの修理道具をもっています。「よかったぁ。この時計は、わしのお気に入りの時計だからねえ」おじいちゃんが、ほっとした顔で笑いました。
おやおや。この古い時計は売り物ではなく、おじいちゃんの時計だったのですね。
今のおじいちゃんの言葉を、こびとの二人は聞いていたでしょうか。
チックン!!
ひときわ大きく針の音がひびきました。
おしまい