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かっこよくて大好きなお父さんとゆうき君のお話です。
ゆうき君のお父さんは車椅子に乗っているという点だけがほかの人と少し違います。それを友達に知られたゆうき君の心は複雑で、ついお父さんを傷つけるような態度をとってしまいました。悲しそうなお父さんの顔を見て、お父さんが大好きなことを再確認したゆうき君は、車椅子生活をするきっかけとなったエピソードを聞き、ますますお父さんを好きになります。今では、かっこよく車椅子で動き回るお父さんの姿は、ゆうき君の自慢です。
愛情に見た目なんて関係ないことが学べるお話です。
ゆうき君のお父さんは車椅子に乗っていました。車椅子を一人で動かしてどこにでも行く姿は、ゆうき君にとってかっこいい自慢のお父さんでした。でも小学校に入ると、なんとなく他の人と違うことが気になりだして、一緒に出かけることが減っていきました。
友達が初めて家に遊びに来ることになった日。「今から友達が来るから、部屋からでてこないでね」ゆうき君は家で仕事をしているお父さんにそう言いました。お父さんは怒ることも悲しむこともしないで「わかったよ」と一言、優しい笑顔で返事をしました。それからしばらくして友達が家にやってきました。
楽しく部屋でゲームをしていると「トイレかしてー」友達がトイレに向かいました。そして戻ってきたその友達から「お前のとーちゃん、車椅子なんだな。今トイレの前であってびっくりしたよ。」と言われました。ゆうき君は他の人と違うお父さんを見られたことが急に恥ずかしくなり、「うん」とだけ返事をしました。
夕方、友達を見送ると「友達帰ったのかー?」お父さんの声に「お父さん、なんで部屋からでたんだよ!」と怒鳴ってゆうき君は部屋にこもりました。 ゆうき君はお父さんのことが大好きでした。友達に馬鹿にされたわけでもありません。ただなんとなく他のお父さんと同じじゃないことが心に引っかかっていました。だから心がモヤモヤして、ついお父さんに大きな声を出してしまいました。
しばらくすると扉の向こうからお父さんの声がしました。「ゆうきごめんな…かっこ悪いお父さんでごめんな…いやな思いさせてごめんなぁ…歩けなくてごめんなぁ…」お父さんは泣いていました。ゆうき君は心がチクチクしました。なぜならお父さんは決して『かっこ悪いお父さん』ではなかったからです。
車椅子でどこにでも行き、ゆうき君ともたくさん遊んでくれます。勉強だって教えてくれるし、逆上がりだって教えてくれました。お父さんは、今も昔もずっと変わらずかっこいいお父さんだったのです。
「お父さんはかっこ悪くなんかないんだ…他のお父さんと少し違うからって、モヤモヤしていたボクがかっこ悪いんだ…。ごめんなさい…。お父さんはぼくの自慢のかっこいいお父さんなのに…。」ゆうき君は部屋から出ると、お父さんに抱きつきました。
お父さんはゆうき君を膝に乗せると、足が動かなくなった時の話をしてくれました。足が動かなくなった原因は事故でした。女の人が車に惹かれそうになったのを助けようとして、お父さんは足を怪我してしまいました。お父さんは昔からかっこいいお父さんだったのです。
ゆうき君がキラキラした眼差しでお父さんを見つめていると、お父さんは自慢げに言いました。「助けた女の人って、実はお母さんのことなんだ。それが出会いで結婚して、ゆうきが生まれたんだよ。」それを聞いたゆうき君は、お父さんのこともお母さんのことも、ますます好きになりました。
数日後、またお友達が家に遊びに来ました。ゆうき君はもうお父さんに「部屋にいて」なんて言いません。部屋の中を自由に動き回って、おやつも運んできてくれるお父さんを見た友達は「ゆうきのお父さん、すごいな!」と褒めてくれました。お父さんはやっぱり、自慢のかっこいいお父さんでした。
おしまい