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お話・読み聞かせ , ehonly , えほんりー , 絵本 , 読み聞かせ
僕と家事の下手なお父さんのお話です。
お母さんは入院中で家事をするのは、お父さんしかいません。
遠足の日、お父さんはお弁当を作ってくれました。
けれど、中身はご飯に海苔が敷いてあるだけのものでした。
友達に笑われ、僕は怒りますが、お母さんからお父さんが一生懸命お弁当を作ろうとしてくれていたことを聞きます。
本当はおかずを入れてあげたかったのに失敗してしまったのです。
僕はお父さんに感謝し、自分も家事を手伝おうと決めます。頑張っているお父さん、お母さんへの感謝の気持ちを大切にしなければならないと学ぶことができます。
僕は今、お父さんと二人で暮らしている。お母さんは元気な赤ちゃんを産むために入院することになったのだ。少しの我慢だと思いながら、お父さんが焼いた焦げたパンを食べて、お父さんが洗濯したシワシワのTシャを着て毎日学校へ行く。唯一の救いはお昼が給食だったこと。それだけは助かった。なぜならお父さんは料理が下手だからだ。夕飯もコンビニのお弁当がほとんどだった。
ある日学校で配られた遠足のプリントに「持ち物、お弁当」と書かれているのを見つけた。「どうしよう…」僕はプリントをお父さんに見せることができなかった。
そして、ずっとお弁当のことを話せないまま、いよいよ遠足の日の目前になってしまった。
僕はどうしようか考えた。「コンビニでおにぎりを買っていこうか…」「パン屋さんのパンを買っていこうか…」「いっそ遠足を休もうか…」答えがでないまま、遠足の日になってしまった。
ソワソワしながら起きると、テーブルには綺麗にハンカチに包まれたお弁当が置いてあった。
キッチンを見るとぐしゃぐしゃで、お父さんががんばって作ってくれたのがすぐにわかった。「お弁当知ってたの?」僕が不思議そうに聞くと「近所の同じクラスのお母さんに聞いたんだ。気をつけて行ってこいよ。」それだけ言うとお父さんは急いで会社に向かった。
お弁当になにが入っているのか不安になりながらも、「コンビニのおにぎりじゃなくて良かったー…」そう言って僕はリュックにお弁当をしまい、遠足へと向かった。
遠足のお昼時間。「オレ、唐揚げつくってもらった!」「私のは、くまのお弁当なの」みんなが自分のお弁当の話をしているのを聞きながら、僕は誰にも見られないように、そっとお弁当のふたを開けた。お弁当はご飯に海苔が敷いてあるだけのお弁当だった。
「なんだその弁当!海苔だけかよ!」友達が僕のお弁当をのぞきながら驚き半分と笑い半分で話しかけてきた。
僕が恥ずかしそうにしていると、友達は笑いながら自分のおかずを僕に分けてくれた。嬉しかった反面、恥ずかしさとお父さんに対する怒りも込み上げてきた。
結局僕は半分だけ食べてあとは残した。
遠足の帰り道、お弁当の文句を聞いてもらおうと、お母さんの病院に寄った。病室に入ると「あら、どうしたの?」とお母さんは嬉しそうにいつもの笑顔で迎えてくれた。僕は今日のお弁当の事を話した。
僕が話し終わるとお母さんが口を開いた。「昨日の夜ね、お父さんから連絡がきたの。お弁当の作り方教えてくれって。お母さん、冷凍食品詰めたら?って言ったんだけど、『初めてのお父さんの手作り弁当が冷凍食品なんてだめだ』とか言っちゃってね、夜中に卵焼きとか唐揚げとか練習してたみたいよ。」「あ…」僕はキッチンがぐしゃぐしゃだったことを思い出した。
「じゃあなんで海苔ご飯しか入ってなかったんだよ…」僕がふてくされながら言うとまたお母さんが笑った。「お父さんね、失敗しちゃって、全部焦がしちゃったんだって。そんな物入れたら友達に馬鹿にされちゃうし、冷凍食品も意地はって買ってなかったから、他に何も入れられなかったっていってたわよ」「お父さんがそう言ってたの?」「うん、けさ会社に行く途中、泣きそうな声で電話がきたのよ。『レンに申し訳ない』って。」
僕は急いで家に帰った。お父さんは毎日夜遅くまで家族のために仕事をして疲れているのに、僕はそんなことも忘れて小さなことで怒ってしまった。そして僕はこれをきっかけに自分のことは自分でしようと決心した。
玄関を開けると、お父さんがキッチンに立っていた。「ごめんなお弁当」お父さんが申し訳なさそうに言った。テーブルを見ると、沢山の失敗した卵焼きが並べてあった。「お父さん。僕にも作り方教えてよ。」
僕が照れくさそうにそう言うとお父さんは少し横に移動して、「いいぞ。でも、卵焼きをナメちゃダメだぞ。こいつはなかなか難しい。」と笑いながらその場所を譲ってくれた。
おしまい