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体が動かなくなる病気をかかえたママの願いを、ハルミちゃんが一緒にかなえる物語です。
ハルミちゃんのお母さんは、ある日突然、ピアノを始めると宣言します。そこには、体が動く今のうちに、ハルミちゃんの結婚式で流す曲を演奏して録音しておきたいという、お母さんの強い思いがありました。それを知ったハルミちゃん、動かないお母さんの左手となり、二人で曲を仕上げます。
きっと、この世で一番ステキなウエディングソングとなることでしょう。
はるみちゃんのママは最近とっても失敗だらけ。お茶碗を割ったり、転んだり。料理も、掃除も、なにか必ず失敗します。
そんなママが急に「ピアノを始めたい」と言い出しました。
はるみちゃんは驚きました。なぜならママはだんだんと身体が動かなくなる病気だったからです。ママの指が最近上手に動かなくなっていることをはるみちゃんは知っていました。
「ママには…無理なんじゃない?」思わず言ってしまいました。するとママは「んー、やってみないとわからないよね!頑張りたいなー」と楽しそうに笑いました。
しばらくすると、大きな荷物が家に届きました。荷物はピアノでした。ママは本当にピアノを買ったのです。
さっそくママは歌いながら子守唄や、童謡や、子どもが好きそうな歌を練習していました。
でもやっぱり指があまり動かないのか、何度も何度も間違えました。「あーまたやっちゃたー!もうちょっと指が動けばな〜!」何度間違えてもママは、そう笑い飛ばしながら諦めずに練習を続けました。
頑張り続けるママにはるみちゃんは聞いてみました。「どうしてピアノを弾けるようになりたいの?」すると「はるみの夢はお嫁さんでしょ?だから練習するの」ママは得意げに笑いながら言いました。
「ぜんぜんわからないよー」はるみちゃんはプーっとほっぺたをふくらませました。ママはごめんごめんとポーズを取りながら、本当のことを教えてくれました。
「ママはね、はるみの結婚式におもいっきりのおめでとうー!をしてあげたいんだけど…ほら、その頃にはきっと、身体が動かなくなってるでしょ。もしかしたら笑うこともできなくなってるかもしれない…。だから今のうちにできることをやりたかったの!」
「できること?」「うん!ママ考えたんだけど…結婚式の入場で、ママが弾いたピアノに合わせてはるみが歩いてきたら素敵じゃない!?だから、指が動くうちに、録音したくって。」ママはすこし悲しそうに笑いました。
「『おめでとー』って動画を撮るとかじゃだめなの?」はるみちゃんが聞くと「だって、元気だったころのママと寝たきりのママを比べられたくないんだもん…。恥ずかしくても、動けないから顔隠せないし…。」ママは子供みたいにほっぺをプーッと膨らませました。
ママの一生懸命な気持ちを知ったはるみちゃんは「はるみのためにありがとう」そう言ってママに抱きつきました。「でもね…もう左の指がぜんぜん動かないのよ…もっと早く練習すればよかった。ほんとママって失敗ばっかり…」ママはまた、悲しそうに笑いました。
「なら、はるみが左手になる!一緒に弾こうよ!」はるみちゃんがそう言ってママの左手を握ると、ママの目に涙がたまりました。「ありがとう…ありがとうはるみ…」そう言うとママは、こらえていた涙をポロポロと流しました。
はるみちゃんとママは毎日いっしょにピアノを練習しました。「はやくお嫁さんになりたいなー」「そんなこと言ったらパパが泣いちゃうよー!」たくさん練習して、無事に録音した曲を聞きながら、いつかくるはるみちゃんの結婚式の話しで二人は楽しそうに笑い合っていました。
おしまい