チャンネル登録:
お話・読み聞かせ , ehonly , えほんりー , 絵本 , 読み聞かせ
足が不自由なナナちゃんと、さとる君との物語です。
ナナちゃんは、ピアノがとても上手です。
ピアノの音色を聴き、演者に憧れを抱いていたさとる君。
それがナナちゃんと知って以来、二人は仲良くなります。地区のお祭りで起こしてしまったハプニングにナナちゃんを巻き込んだことを謝れないまま、ある日ナナちゃんは消えてしまいます。一年後、ある姿で再開した二人は、お互いの気持ちを伝え合うことが出来ました。
さとる君の家は夕方になると、何処からともなくピアノの音が聴こえてきました。「こんな上手なピアノを弾くのは、きっと綺麗なお姉さんに違いない」さとる君は勝手に想像をして、ピアノの音を聞くたびにドキドキしていました。
ある日友達の家から帰っていると、いつものピアノの音が聞こえてきました。思わずどこの家から聞こえてくるのかあたりを見回すと、音はやんで、近くの家からピアノの先生らしい人が出てきました。先生に続いて、お母さんと車椅子の女の子も一緒に出てきました。
お見送りしているようすから判断すると、どうやらこの女の子がピアノを弾いているようでした。
女の子はさとる君と同じ小学校3年生くらいでした。
でも、学校では見たことがありません。さとる君が思い切って話しかけてみると、女の子の名前はナナちゃんということ、足が悪いから別の小学校に通っていること、そしてさとる君よりも1つ年上だということを教えてもらいました。
優しそうなナナちゃんのママは「車椅子生活であんまり近所に友達がいないから、よかったら今度遊びに来て」と、笑顔で言ってくれました。
仲良くなりたかったさとる君は、その日からちょこちょこナナちゃんの家に遊びに行くようになりました。
しばらくたったある日、近所の神社でお祭りがありました。さとる君はナナちゃんを誘い、初めて二人ででかけました。
屋台を二人で楽しんでいると、クラスのやんちゃなグループの子達に会いました。
「なんだお前、女なんか押してまるで召使いだな」
次々に悪口を言われたさとる君は、最初は我慢していましたが、ナナちゃんのことまでバカにされたので、ついに取っ組み合いの喧嘩になってしまいました。
クラスメイトともみくちゃになっていると、思い切り車椅子にあたってしまい、ナナちゃんは派手に転んでしまいました。
そのせいで、折角の浴衣も泥だらけ。それを見てクラスメイトはあわてて逃げていきました。
喧嘩は終わりましたが、ナナちゃんは泣いていました。「ごめん…」さとる君は謝ると、近くの大人に手伝ってもらい、ナナちゃんを車椅子に乗せました。そのまま無言でナナちゃんを家にお送り届けると逃げるように家に帰りました。
さとる君は、許してもらえるのかが不安で、その日からナナちゃんの家には遊びに行きませんでした。すると何故か、ピアノの音も全く聞こえなくなりました。
心配になったさとる君がナナちゃんの家に様子を見に行くと、ナナちゃんは引っ越していました。
通りかかった近所の人が「足の手術をするために海外の病院へ行ったのよ」と教えてくれました。喧嘩をしてしまったことで転ばせてしまい、浴衣を汚してしまったことをちゃんと謝れなかったこと。そして、さよならが言えなかったこと。さとる君は心から後悔しました。
1年が経ち、また夏がやってきました。
夏祭りの日、1年前に一緒に行ったお祭りのことを思い出しながら、さとる君は神社の境内にお賽銭を入れて、ナナちゃんの手術が上手く行くことを祈りました。それから「出来たらもう一度会いたい…」と願いました。
お祈りが終わり家に帰ろうと振り返ると、そこにはナナちゃんがいました。
ナナちゃんはあの日、転ばせてしまい泥だらけにしてしまった1年前と同じ浴衣を着て、両足でしっかりと大地に立っていました。
さとる君は驚いたのと会えた嬉しさで思わず泣きじゃくりました。
ナナちゃんは手術が上手くいった事、気まずくて、さよならの一言も言わずに行ってしまった事、
そしてここにくれば、もう一度会えると思って帰国を少し早めてもらった事をゆっくりと話してくれました。
二人は会えなかった間の話しをたくさんしました。もともと仲良しだった二人はすぐに仲直りをすることができました。それからはまた、さとる君の家には何処からともなくピアノの音色が聞こえてくるようになりました。
おしまい