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お弁当に込められた愛情を描いた物語です。
おばあちゃんは、りえちゃんが幼稚園生の時に病気で亡くなったお母さんの代わりに、りえちゃんのお世話をしています。でもりえちゃんは、お母さんのカラフルなお弁当と正反対の、おばあちゃんの地味な色味のお弁当を好きになれません。ある時お父さんから、「このお弁当には体に良いものを食べて健康でいてほしいという、おばあちゃんの愛情が詰まっているんだ」と聞いたりえちゃんは、おばあちゃんに感謝し、お弁当を好きになれたのでした。
愛情表現には様々な種類があると気付かされるお話です。
りえちゃんは、おばあちゃんとお父さんの3人ぐらし。お母さんはりえちゃんが幼稚園の頃に病気で亡くなりました。りえちゃんのお母さんが作ってくれるお弁当はとてもカラフルで、赤や黄色や緑が綺麗な可愛らしいお弁当でした。りえちゃんは幼稚園のお弁当の時間がとても楽しみだったのをよく覚えています。
一方でおばあちゃんの作るお弁当は、お母さんがつくるお弁当とは正反対。赤いたこさんの形のウィンナーは白っぽく色のないウィンナーに。ハムもなんだかボケた色。ご飯は黄色い麦ごはんでした。色とりどりだったお弁当は、全部が茶色く可愛くないお弁当に変わってしまいました。
りえちゃんはそれが恥ずかしくて、たまに持っていくお弁当を自分で作るようになりました。作ると言っても、お父さんにお願いをして、冷凍食品を買ってきてもらって、自分で詰めるだけ。ご飯はしぶしぶ黄色い麦ごはんを詰めましたが、ふりかけをかけてごまかしていたこともあって、お友達からは「りえちゃんのお弁当、美味しそうだね!」と褒められました。
遠足の前の晩、りえちゃんは楽しみであまり寝付けませんでした。そのせいでりえちゃんはうっかり寝坊をしてしまい「どうしよう!!お弁当作ってたら遅刻しちゃう!!」と慌てていました。
すると「これ、持っていきなさい」おばあちゃんがお父さんに渡すはずだったお弁当を、りえちゃんのお弁当箱に詰め直して渡してくれました。りえちゃんは仕方なくおばあちゃんの作ったそのお弁当をもって遠足に行くことにしました。
お昼の時間、恐る恐るフタをあけると、昔と変わらず茶色いおかずに黄色い麦ごはんがぎっしり詰まっていました。
りえちゃんはみんなに隠すように急いで口に運んでいると「あれー?りえちゃんのお弁当いつもと違うね!」友達に言われ、恥ずかしくなったりえちゃんは、それ以上お弁当を食べることができませんでした。
家に帰ったりえちゃんは、恥ずかしい思いをさせたおばあちゃんに腹が立っていたので、食べかけのお弁当箱を洗い場に出すと、夕飯も食べずにそのまま部屋にこもって寝てしまいました。
夜、帰ってきたお父さんが心配して部屋に入ってきました。「お腹すいてないか?お饅頭買ってきたから一緒に食べよう」お饅頭を食べながらりえちゃんは、おばあちゃんのお弁当が恥ずかしかったことをお父さんに話しました。
するとお父さんは「お母さんのお弁当は可愛かったもんなー♪お父さんも、お母さんの作ったお弁当大好きだったよ。でもな、おばあちゃんのお弁当も、色は無いけどお母さんのお弁当と同じくらい愛がたくさん詰まっているんだよ」りえちゃんはお父さんの言っている意味がわからず、「へー」とだけ返事をしました。
「ウィンナーやハムに色がないのも、ご飯が麦ごはんなのも、全部りえのためなんだよ」「なんで?私は綺麗な色のお弁当がいい!お母さんの可愛いお弁当がいい!」りえちゃんはやっぱりお父さんの言っていることがわかりませんでした。「色がついていないものは、着色をしていない、その食べ物の自然な色なんだ。麦ごはんも、普通の白いごはんよりも沢山栄養があるんだよ。」
「おばあちゃんはね、りえのお母さんが病気になってから、とても食べ物に気をつけるようになったんだ。なんでかわかるか?」「なんで?」「りえに長生きしてほしいからだよ。健康にいいものを沢山食べて、元気に長生きしてほしい、おばあちゃんはいつもそれを願ってるんだ。
可愛いお弁当を作るのも愛情。身体に気を使ったお弁当を作るのも愛情。りえのお弁当は、いつだって愛情がたくさん入ってるんだよ」とお父さんは優しく微笑みました。その時初めて、りえちゃんはおばあちゃんのお弁当に込められた願いを知りました。
おばあちゃんの気持ちが嬉しかったのと同時に、申し訳ない気持ちがこみ上げてきました。でも、おばあちゃんとあまり仲良くしてこなかったりえちゃんは直接謝るのが恥ずかしかったので、おばあちゃんに手紙を書きました。「おばあちゃん、お弁当残してごめんね。明日から、りえのお弁当もお願いします。残さず食べて、長生きするからおばあちゃんも長生きしてね」手紙と一緒にお饅頭もテーブルに置いて、その日はベッドに入りました。
次の日の朝、りえちゃんが起きてくると、テーブルには2つお弁当が並んでいました。「はい、りえちゃんのお弁当。おまんじゅうありがとうね。」嬉しそうにおばあちゃんがお弁当を渡してくれました。りえちゃんは「ありがとう!」と一言言って、大事そうにお弁当をカバンにしまいました。
おしまい