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10歳のこうき君が一人でおばあちゃんの家に行くお話です。
一人旅を楽しみにしていたこうき君ですが、いざ一人で電車に乗ると寂しくなってしまいます。そんなとき、お母さんが持たせてくれたお菓子の袋の中にお母さんからの手紙を見つけます。愛情のこもった手紙に、こうき君は元気が出ました。
乗り換えの電車を間違えてしまっても、泣かずに駅員さんに尋ねることも出来ました。頑張りたいと思ったときには、自分の成長を喜んでくれる人を思い出せば勇気が湧いてくるのですね。
こうき君はこの夏休み、初めて一人でおばあちゃんの家に行くことになりました。おばあちゃんの家までは新幹線で2時間。電車を乗り換えて1時間。とても遠いところにありました。ワクワクしているこうき君とは反対に、お母さんはとても心配そうにしていました。
出発の日、駅のホームで心配そうにしているお母さんに「大丈夫だよ」そうこうき君が笑うと「気をつけてね。これ、電車で食べなさい」そう言ってお菓子の入った袋を渡してくれました。「ピリリリリリー」電車の発車音が鳴り響きました。
電車が走り出すと、お母さんは見えなくなるまで手を振ってくれました。お母さんの姿が見えなくなると、急に寂しさがこみ上げてきたこうき君は、なんとか気を紛らわせようともらったお菓子の袋を開けました。
中にはこうき君の好きなお菓子がたくさん入っていました。どれを食べようか悩んでいると、おかしに混じって封筒が入っているのを見つけました。開けてみること、中には手紙が1枚。お母さんの可愛らしい字が書かれていました。
「こうきへ。初めての一人旅だね。こうきはもう10歳。あんなに小さかったのに、一人でおばあちゃんの家に行けるくらい大きく成長したんだね。小さかったこうきは寂しがり屋で甘えん坊で、いつもお母さんにくっつていたよね。そんなこうきを今ではとても懐かしく感じます。
こんなに長い時間こうきと離れるのは初めてだから、お母さんが泣いてしまいそう。おばあちゃんの家についたら、たくさん遊んでね。こうきが楽しそうに笑ってくれていると思うと、お母さんなんだって頑張れます。たまに電話して、声を聞かせてね。大好きよ。お母さんより。」
手紙を読み終えると、「お母さん、『泣いてしまいそう』なんて、子供みたいだなー」こうき君はくすくすと笑いました。こみ上げてきた寂しさも、一人ぼっちで乗る電車の心細さも、お母さんの手紙を読んでどこかへ吹っ飛んでしまいました。
こうき君は電車に乗っている長い時間、小さかった頃を思い出していました。手紙に書いてあった通り、寂しがり屋で甘えん坊だったこうき君は、いつでもお母さんを追いかけていました。お母さんは嫌がることもなく、いつだって優しい笑顔で抱きしめてくれました。
小さい頃を思い出していると、うっかり乗り換えの電車を間違えてしまいました。こうき君は慌てましたが、お母さんからもらった手紙を思い出して、「もうボクは昔の甘えん坊じゃないんだ」と泣きそうな気持ちをぐっと抑えて、次の駅で降りました。
勇気を出して、駅員さんからおばあちゃんが待っている駅に行く電車を聞いたこうき君は、お母さんの手紙をなんども思い出しました。「大丈夫、大丈夫…」そう言い聞かせながら、無事にたどり着くことができました。
おばあちゃんの家に着くと、お母さんが寂しくないようにさっそく家に電話をしました。電車から見えた景色の話し、美味しかったお菓子の話し。それから電車を間違えた話し。今日あったことを一通り話し終えると、最後に照れくさそうに「手紙ありがとう」そうお母さんに伝えました。
おしまい