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「鶴の恩返し」の正体がばれていたお話です。
けがをした鶴を助けた夜、おじいさん、おばあさんのもとに道に迷ったという美しい娘がやってきます。
快く泊めたおじいさんたちに、娘はお礼に反物を織りました。
おじいさんたちは娘の正体が鶴だと気づいていたので、反物は売らずに娘の半天にしてあげました。
それでは恩返しにならないと言う娘に、おじいさんたちはあることをお願いをしまた。人に優しくすることはもちろん、恩返しをすることは、自分の幸せにもつながるのです。
むかしむかし。 ある村に一人のおじいさんとおばあさんが住んでいました。 ある冬の朝、おじいさんが山へ出かけると、罠にかかった一羽の鶴が、苦しそうにもがいていました。「これは可哀相に…」おじいさんは慌てて鶴を助けると、傷の手当てをしてあげました。手当が終わると、鶴はまるでお礼をするように鳴いて、元気に飛び去っていきました。
その夜はたいへんな吹雪になりました。
そんな中、「コンコン」と玄関を叩く音がしました。
おばあさんが扉を開けると、そこには真っ白い着物を着た、美しい一人の娘が立っていました。「この吹雪で道に迷ってしまいました。どうか、一晩泊めてはいただけないでしょうか?」
「それは大変だったろう。見てのとおりなんにもない家だが、暖まっていきなさい」
おじいさんとおばあさんは娘を家に入れてあげました。
娘の布団を機織りの部屋に敷いてやると
「お礼になるかわかりませんが、これで反物を織らせてください。その代わり、でき上がるまで、決して部屋を覗かないようにお願いします」
娘がお願いするので、おじいさんとおばあさんは不思議に思いながら「…そうかい。お前さんの好きにするといいよ。」と答え、約束どおり決して部屋を覗きませんでした。
次の日の朝、娘は立派な反物を織り上げておじいさんとおばあさんに見せました。「なんて立派な反物でしょう!」
おじいさんもおばあさんも驚きました。それからおばあさんは疲れた様子の娘に少し休むように言い、おじいさんは反物を売りに行くと言って出かけて行きました。
帰ってきたおじいさんは、反物がすごく高く売れたと、とても嬉しそうでした。
そして、そのお金で買ってきたと、娘の前にごちそうを並べました。
娘も喜んでもらえたのが嬉しくて、その夜はみんなで仲良くごちそうを食べました。
ごちそうを食べ終わると娘は
「それでは、今夜もまた機を織りますので、中を覗かないで下さい…」
と言い、機織り部屋へ入ろうとしました。
しかし「いや、まだ疲れているだろう。無理せずにゆっくり休んで、良くなったらまたお願いするよ」おじいさんとおばあさんに止められてしまいました。
娘は「わかりました…」と言うことを聞き、その夜は機織りをせずに眠ることにしました。
けれど、次の夜も、その次の夜も、おじいさんもおばあさんも娘に機を織らせてはくれません。その間、娘は家事をせっせとこなし、まるで本当の娘のようにおじいさんとおばあさんと暮らしました。
しかしある夜。娘はおじいさんとおばあさんに内緒でもう一度だけ反物を織り、この家を出て行こうと決めました。
娘は哀しげに微笑みながら「今まで、ありがとうございました… さようなら…」娘は眠っているおじいさんとおばあさんにそっとお別れを告げると、機織りの部屋へと向かいました。
すると、部屋の扉を開いた娘の目には、思いもよらなかったものが飛び込んできました。
「………え?」そこにはいつもの機織り機はなく、代わりに一着の美しい、真っ白い半天がかけられていたのです。娘が驚いていると、おじいさんとおばあさんが起きてきました。
「これから、どんどん寒くなるぞ。元々はお前さんの羽根から織られたものだ。新しく生え替わるまで、これを着てしのぎなさい」
優しく娘にそう伝えると「おじいさん…おばあさん…」娘からはポロポロと大粒の涙が流れました。おじいさんもおばあさんも部屋を覗かなくとも、最初から全部わかっていたのです。娘が、あの時山で助けた鶴であると。
だから反物を売りに行くふりをしてその反物で娘用の半天を新しく繕ったのでした。
「でも、それじゃ私は恩返しができません…」
「なら、これからもこの家の娘として、ここで一緒に暮らしてくれんかね?子供のいない私たちには、それが一番嬉しい恩返しだよ」
「………はい!」
こうして、娘とおじいさん、おばあさんは本当の家族になり、末永く幸せに暮らしましたとさ。
おしまい