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ハリネズミのお父さんと娘ハーちゃんのお話です。
お父さんはハーちゃんをとてもかわいがっていました。
けれど、ハーちゃんは成長し結婚することになります。
お父さんは寂しさから素直に祝福の言葉をかけられません。
それでもハーちゃんの幸せそうな姿を見て、ようやく祝福することができます。大切な娘だからこそ寂しく、素直になれないのが親心なのですね。
森の小さな切り株に、ハリネズミの一家が住んでいました。季節は春。森には沢山の白いちょうちょが舞い踊っていました。
お父さんは娘のハーちゃんをとてもかわいがっていました。ハーちゃんが熱を出したらつきっきりで看病をし、お腹が空いたらハーちゃんと一緒にきのこをとりに行き、愛情いっぱいに育てていました。ハーちゃんもいつも近くで見守ってくれる、そんなお父さんが大好きでした。
しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎ、ハーちゃんは素敵な大人のハリネズミに成長しました。そして、とうとうお嫁さんになって家を離れる時がやってきたのです。
お嫁に行く日の朝、「お父さん、いつも優しくしてくれてありがとう。」とハーちゃんは泣きながらお父さんに挨拶しました。
するとお父さんは、自分の手をわざと、自分の針でちっくんと刺して「俺は泣いてないぞ!針がちょっと痛かっただけだ!」と鼻をすすりながら背中を向けてしまい、ハーちゃんを見ようとしませんでした。「きっとお父さん寂しいのね」ハーちゃんの支度を手伝いながらお母さんがクスっと笑いました。
背中を向けたお父さんは、窓の外を見ながら小さかった頃のハーちゃんを思い出していました。ハーちゃんはいつもドジをするのでお父さんはハーちゃんのことが毎日とても心配でした。自分の針が木に刺さって抜けなくなったり、みんなで作った風船をつまずいたひょうしに針で全部割ってしまったり・・・
心配性のお父さんはついついそんなハーちゃんを叱ってしまい、ハーちゃんはよく泣いていました。そんなドジばかりしているハーちゃんが、とうとうお嫁に行ってしまうのです。お父さんは寂しくて心配で「おめでとう」の言葉がなかなか出てきませんでした。
玄関を出ようとしているハーちゃんに、お父さんは思わず「旦那さんに迷惑をかけて怒らせるなよ!」と大きな声で言ってしまいました。それを聞いたハーちゃんは、怒られているはずなのに、涙を流しながら笑顔で「お父さんありがとう、大好きだよ」と言い、旦那さんのところへ走っていきました。
針で破けそうな白いレースのウェディングドレスは、それはそれはきれいにヒラヒラと舞って
まるで白いちょうちょと一緒に舞踊っているようでした。
「おめでとう。」嬉しそうに旦那さんとはしゃいでいるハーちゃんを見て、お父さんはようやく本当の気持ちを伝えることができました。
おしまい