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コウタ君がかっこいいお兄ちゃんになるまでのお話です。
お母さんのお腹には赤ちゃんがいてコウタ君の音楽会を見に行く約束を守れませんでした。コウタ君は怒りますが、赤ちゃんが生まれ、お父さんとお母さんに「いつも家族を守ってくれてありがとう」とお礼を言われると、お兄ちゃんとしての自覚が芽生えます。
大切な人を守るという思いが心の成長につながるのです。
コウタ君のお父さんは仕事の都合で離れて暮らしていました。家にいるお母さんはお腹に赤ちゃんがいるので、いつも大きなお腹で弟の世話に追われていました。コウタ君はそんなお母さんに「お腹重いのに大丈夫?」と、よくお手伝いをしました。
ある日学校で、もうすぐ行われる音楽会の案内プリントが配られました。コウタ君は急いで家に帰りお母さんにプリントを渡すと「みんなで今すごい頑張って練習してるんだよ。だから絶対見に来てよね」と、念を押すように言いました。
音楽会が近くなると、リコーダー担当だったコウタ君は早朝練習をしに学校に早く行くことが増えました。「がんばってね」そんなコウタ君をお母さんも弟も応援していました。
いよいよ音楽会当日。「おはよう!」音楽会が楽しみでコウタ君はいつもより早く起きました。するとお母さんは「コウタごめんね…。今日の音楽会ね、行けないんだ。お母さん、赤ちゃんがそろそろ生まれてきそうなの…」と申し訳なさそうに言いました。
コウタ君が「絶対来てってお願いしたじゃないか。約束したじゃないか!」と怒ると、お母さんは「ごめんね、家でまた音楽会してね」と痛そうな顔でお腹をさすりながら言いました。コウタ君は悲しくて、行ってきますも言わずにバタンと大きな音をたててドアを閉め、学校へ向かいました。
音楽会本番。舞台に上がるとみんなは、お父さんお母さんが見に来ているのか小さく手を振ったり、恥ずかしそうに照れたりしていました。コウタ君は寂しい気持ちでいっぱいのまま、演奏を終えました。
音楽会が終わり学校から帰ると、赤ちゃんが生まれそうと連絡を受けて、仕事を休んで急いで駆けつけてきたお父さんが待っていました。「赤ちゃん、生まれたぞ!みんなで病院へ急ぐぞ!」と、ソワソワしたお父さんと弟と一緒に病院に向かいました。
病室に入ると、少し疲れた顔のお母さんが、コウタ君と弟に小さく手を振ってくれました。
赤ちゃんはまだ、看護師さんがお世話してくれるらしく一緒にはいませんでした。
はしゃいでいる弟とは反対に、コウタ君はまだちょっと今朝のことが心に引っかかっていました。すると、お父さんが「コウタ、お父さんの代わりにいつもお母さんのこと守ってくれてありがとうな。」と言って頭をぐりぐり撫でました。
コウタ君は何と言っていいか分からず、そのまま固まってしまいました。
すると、お母さんが「コウタがね、お母さんも弟も赤ちゃんも、みんな守ってくれてるの。本当にありがとう」と言ってにっこり笑いました。
コウタ君は引っかかっていたものがスーッと柔らかくなって溶けていったような気持になって「だって妹もできたもんね!」と得意げに言いました。
お父さんが仕事へ戻る前の日、退院したお母さんも一緒に、家でコウタ君の音楽会を開きました。本当の演奏はピアノやオルガン、タンバリンも入るのだけど、今日はコウタ君のリコーダーだけ。弟が幼稚園で使っているカスタネットを持ってきて途中で一緒に叩いてくれました。
みんなと一緒だとうまく吹けたリコーダーもちょっと間違えて、みんなに笑われてしまいました。でも最後まで諦めずに吹き終わると、コウタ君は盛大な拍手をみんなからもらいました。
お父さんは「コウタ、リコーダー上手いなぁ」と大げさなくらい関心して、最後まで大きな拍手をしてくれました。
「まだ、お父さんにはかないっこないけど、お父さんがいない時は僕が家族を守る。だって僕はお兄ちゃんなんだから」
恥ずかしくて声には出せなかったけど、コウタ君は心の中でそう誓いました。
おしまい