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ヒナちゃんとテツ君の交流を描いたお話です。
転校生ヒナちゃんは、とても可愛らしく、テツ君には遠い存在に感じられましたが、気さくなヒナちゃんと会話を交わしたり一緒に登下校するうちに打ち解けていきます。すっかり仲良くなったころ、ヒナちゃんが急に引っ越すことに。別れを交わす間もなく離ればなれになってしまいます。遠くの中学に通うようになり、緊張していたテツ君はヒナちゃんと再会したことで、心から安心できたのでした。
笑顔は人に元気を与えること、二人の絆が学べます。
テツ君のクラスに転校生がやってきました。とても綺麗な女の子で「名前はヒナです。ピアノが得意です。」と、可愛らしい声で自己紹介をしました。ヒナちゃんの席はテツ君の隣でした。でもなんだかテツ君には遠い世界から来た女の子に思えて、話しかけることができませんでした。
その日の帰り、テツ君は係の仕事で学校を出るのが遅くなってしまいました。1人でとぼとぼ帰っていると、道の途中でキョロキョロ辺りを見渡している女の子がいました。よく見ると転校生のヒナちゃんでした。
なんとなく恥ずかしくて、テツ君はヒナちゃんに見つからないように下を向きながら足早に通り過ぎようとしましたが、「ねぇねぇ!」ヒナちゃんが話しかけてきました。
「隣の席の人…だよね?」テツ君が黙って頷くと「よかった〜!同じクラスの女の子達と一緒に帰ってたんだけど、バイバイした途端、道に迷っちゃって…」ヒナちゃんは恥ずかしそうに笑いました。
ほっておくこともできないので「家どのへん?」と、しぶしぶテツ君が聞くと、「近くにスーパーと公園があって、家の前には畑があるの。あと、裏にある家はピンク色だった!」ヒナちゃんが詳しく教えてくれたのでテツ君はそれがどこだかすぐにわかりました。「ウチ近いから連れてってあげるよ」そう言うと、ヒナちゃんは嬉しそうに頷きました。
歩き始めたテツ君とヒナちゃんは、前の学校の話や担任の先生の話、色んな話をしました。始めは緊張していたテツ君も、明るく話しかけてくれるヒナちゃんのおかげですっかりいつもの調子。あっという間に時間は過ぎ、「あーっ!家が見えた!」ヒナちゃんが嬉しそうに叫びました。
玄関の前まで来ると、「よかったら、明日から一緒に登下校しない?道もまだ分からないし…。」
ヒナちゃんが照れくさそうに言いました。テツ君はクラスの人に見られたらからかわれるんじゃないかと少し考えましたが、他に断る理由もないのでOKをだすと、「ありがとう!それじゃあまた明日!」とヒナちゃんは嬉しそに自分の家に入っていきました。
それから毎日テツ君はヒナちゃんと登下校をしました。二人は毎日その日の学校での出来事や、楽しかったことを笑いながら話して楽しい時間を過ごしました。
ある日、テツ君が待ち合わせ場所でいくら待ってても、ヒナちゃんはきませんでした。仕方なく1人で登校すると、先生からヒナちゃんが親の都合で急に引っ越してしまったことを聞きました。「なんだよそれ…」何も教えてもらえなかったことが寂しくて悔しくて、テツ君はふてくされながら自分の席に着きました。
すると、机の中から手紙が出てきました。可愛らし字から、すぐにヒナちゃんからの手紙だとわかりました。『急に転校が決まって連絡することができませんでした。ごめんなさい。またどこかで逢えるといいね。あと、毎日一緒に歩いてくれてありがとう。とても嬉しかったよ。』
(少しモヤモヤは残るけど、きっといつかまた逢えるだろう…)と、寂しい気持ちを抑えるように、テツ君は手紙をそっとポケットにしまいました。それから数年後、テツ君はみんなとは違う、家から離れた中学校に電車に乗って通うことになりました。
入学式の日、知らない人だらけの教室でソワソワしながら椅子に座りました。「ヒナちゃんも転校してきた時は、こんな気持だったのかな…」あの頃のヒナちゃんの気持ちが少しだけわかったような気がしました。すると、後ろからなんだか懐かしい声がきこえてきました。
「…また逢えたね。」
後ろを振り返ると、そこには中学生になったヒナちゃんの姿がありました。テツ君は照れくさそうに「…また逢えたな。」と返し、2人はまた駅から中学校までの道を一緒に登下校しはじめました。
おしまい