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自分の名前の由来を聞いたことで、改めてその良さを実感することのできた正義君のお話です。
年齢が上がるにつれ、友だちにからかわれるようになった自分の名前を、何だか好きでなくなってしまった正義君。そんな時、名前の由来を調べる宿題をきっかけに、自分の名前に込められたお母さんの気持ちを知ることができました。
生まれる前にお母さんが出会った勇敢な少年の正義感を自分も受け継ぎ、名前に誇りを持って生きてゆく事を決めたのです。
僕の名前は「正義(せいぎ)」。ちょっと変わった名前だ。保育園でも学校でも、あだなは「正義のヒーロー」だった。小さい頃はヒーローごっこが好きだったからこのあだ名も気に入っていたけど、小学校に入ると「お前の名前へんなのー」とか言われることがあって、なんだか恥ずかしくて自分の名前を好きになれなくなってしまった。
ある日自分の名前の由来を調べる宿題が出た。僕の名前は「正義」。聞かなくてもなんとなく由来はわかった。でも、一応家に帰ってからお母さんに聞いてみた。お母さんは懐かしそうに微笑みながら僕の名前の由来を話し始めた。
「正義がお腹の中にいるときね、まだ妊娠3ヶ月くらいのときかなー。お母さんつわりがとってもひどくて、スーパーでお買い物してる時に、具合が悪くなって動けなくなっちゃったの。」「そしたらね、悪そうなお兄さん達に囲まれちゃって、カバン取られそうになっちゃったんだ。」「え!?大丈夫だったの?」僕は続きが気になって仕方なかった。
「うん。大丈夫だったの。」「どうして?お母さんがやっつけたの?」「違う違う!たまたま通りかかった小学生の男の子がね、『弱い者いじめはいけないんだぞー!』ってお母さんを守ってくれたの!」「え!?小学生が!?」僕は驚いた。「うん。丁度、今の正義と同じくらいの歳の小学生。お母さんもびっくりしたし、悪いお兄さんたちもびっくりしてた。」「戦ったの?」僕はますます続きがきになった。
「お兄さん達に『邪魔だ』とか『どけ』とか言われて突き飛ばされても、その男の子は『いやだ!正義は勝つんだ!』って言って、お母さんを守ってくれたの。そのうちに男の子の声が聞こえたのか、警備員さんが来てくれて、お母さんもその男の子も助かったんだ。」
「そのときにね、産まれてくる子も、この男の子みたいに、正義を信じて弱い者を助けるような、心の強い子に育ってほしいなーと思ったの。」「これが、あなたの名前の由来よ。」
僕は驚いた。自分の名前にそんな理由があったなんて、想像もしていなかった。それから僕は「正義」って名前がちょっと誇らしくなった。名前が似合うように、僕はその男の子のような街のヒーローになる決意をした。まずは…街のゴミ拾いから。1歩1歩ヒーローに近づけるように僕はがんばろうと思う。
おしまい