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ヒナちゃんのおばあちゃんのお話です。
おばあちゃんは、病気で入院していて、ヒナちゃんに会うことができません。おばあちゃんは、亡くなる前に元気な声だけでもヒナちゃんに届けようと声を録音します。それは、ヒナちゃんの成長の節目ごとに向けられたメッセージでした。ヒナちゃんは、そのメッセージからおばあちゃんの愛情を感じます。
たとえ会えなくても、深い愛情はずっと側に寄り添っているのです。
おばあちゃんは孫のヒナちゃんが生まれるのをとても楽しみにしていました。でもヒナちゃんが生まれた時、おばあちゃんは急な病で病院のベッドの上にいました。
生まれたばかりのヒナちゃんを病院に連れて行くこともできないので、おばあちゃんはヒナちゃんに会うことができません。可哀相に思ったパパとママは相談して、ヒナちゃんの様子をビデオカメラで撮って、病院に持って行くことにしました。
おぎゃあ、という泣いている姿。「うっくん、うっくん」おっぱいを飲む姿。そのうち、おならをしているところまで撮られていて、ゲラゲラ笑っているパパとママの声も入っていました。
病院でおばあちゃんは涙を流し、大笑いし、「ありがとう、ありがとう。」と繰り返しお礼を言いました。
おばあちゃんの体調はなかなか良くならず、入院が長引いていたある日「まだ話せるうちにこの子に私の声を録音して届けて欲しい。」
と、おばあちゃんはパパとママにお願いをしました。パパが「ビデオがあるから録画しましょうか。」とビデオカメラを取り出すと、「やつれた顔は孫に見せたくないのよ。声はまだ元気だから、録音だけお願い。私の入院前の元気な写真を添えてね。」とおばあちゃんは答えました。
声を録音しはじめてから、しばらく経ったある日、おばあちゃんは亡くなりました。
元気な時の写真が遺影として飾られ、お葬式の場におばあちゃんがヒナちゃんに向けて録音していたテープが流れました。
「元気でね。お父さんお母さんの言うことをよく聞くのよ。」そんなふうな短いメッセージが、何度も会場に流れました。
何年か経ち、成長したヒナちゃんは幼稚園に通うようになりました。ひな祭りの日、お雛様を飾ってお友達も呼んでみんなで食事をしようというときに、音楽が流れました。「明かりをつけましょ、ぼんぼりに~」それはおばあちゃんの声でした。
おばあちゃんの録音メッセージは度々ひなちゃんの家に流れました。
小学校に入学したとき、七五三の7歳のお祝い、中学校、高校、大学、成人式、社会人になったとき。そして、最後の録音メッセージは、結婚披露宴の会場で流れました。
「いよいよ新しい家庭を築くのね。よく育ってくれた。本当に有難う。これが私からの最後のメッセージ。いつまでも元気で幸せにね。」
おばあちゃんに会ったことがないヒナちゃんでしたが、ヒナちゃんの側にはいつもおばあちゃんがいました。ヒナちゃんは涙が止まりませんでした。「ありがとうおばあちゃん」ヒナちゃんはそうつぶやくのが精一杯でした。
おしまい