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おじいちゃんと一緒に、幼稚園生の妹の運動会を応援に来たマサ君のお話です。
足の悪いおじいちゃんは、歩くのに杖が必要なほどです。借り物競走で一緒に来た人の札を引いた妹は、おじいちゃんとも一緒に走りたいと言って聞きません。マサ君はおじいちゃんの帽子と杖を持ち、妹と走ります。その様子に、おじいちゃんは嬉し泣きです。家に帰ると、パパから賞状プレートに3人の名前が入ったケーキのプレゼント。3人揃って頑張り賞をもらったのでした。
みんなそれぞれ家族を思う気持ちがよくわかるお話です。
マサ君の家はケーキ屋さん。日曜日はいつもお客さんがたくさんやってくる。
ある日、マサ君の妹が通う幼稚園から運動会のお知らせが配られた。いつもは臨時休業にして参加するパパとママだけど、その日はとても大切な人のウエディングケーキの予約が入ってしまい、運動会を諦めるしかなかった。仕方がないので、一緒に住んでいるおじいちゃんと、小学6年生のマサ君が幼稚園の妹を連れて参加することになった。
おじいちゃんは片足が不自由だった。運動会の日、おじいちゃんは杖をついて、折り畳みの簡易腰かけを持って出かけた。
嬉しそうにおじいちゃんと手をつないで歩いている妹の後ろで、マサ君は両手にお弁当やら水筒やら荷物をいっぱい持って歩いていた。
幼稚園に着くと、おじいちゃんは「どっこいしょ」と言いながら腰かけに座った。暑い日だったので、大きな帽子もかぶっていた。マサ君は隣にレジャーシートを敷いて、おじいちゃんと一緒に競技を観戦した。プログラムはどんどん進み、妹はかけっこで2着ゴールイン!
おじいちゃんもマサ君も大声で声援を送ると、妹は照れくさそうに先生の後ろに隠れた。
「次の競技は、借り物競走です。走っていって札に書いてあるものを、見ている皆さんから借りて走ってください。」先生のアナウンスが終わると「よーいどん!」みんな一斉に駆け出した。1番に札を取った妹は、札を見るなり立ちどまってしまった。
「どうしたんだ。」マサ君は思わず駆け寄った。妹の札には「今日、一緒に来た人」と書かれていた。
「よし、一緒に走ろう!」マサ君が妹の手を取ると「おじいちゃんも一緒に来たもん!一緒に走りたい!」と言って妹は走ろうとしない。でも妹がいくらダダをこねても、足の悪いおじいちゃんは一緒には走れない。マサ君は少し考えてから今度はおじいちゃんのところにものすごい勢いで駆け寄った。
「おじいちゃん!帽子と杖を貸して!」
マサ君は帽子をかぶり、杖を持ったかと思うと、あっという間に妹と一緒にものすごい勢いで走り出した。「おにいちゃん、おじいちゃんみたいだろ!」そう言いながら、マサ君は他の子供たちを次々追い抜いて行った。そしてみごと1着でゴールイン。
マサ君は帽子を取ると、めいっぱい空に掲げて振った。
他の子供たちも見に来ていた人たちも、先生たちも大きな拍手を送ってくれた。マサ君がおじちゃんのほうを見ると、なんと泣きながら拍手をしていた。「きっとおじいちゃんも一緒に走りたかったんだろな」マサ君はそう思った。
プログラムが終わりに近づいた頃、仕事を終えたパパとママが急いでやってきた。マサ君は妹がかけっこで2番だったこと、借り物競走で1番だったことを興奮気味に話した。パパとママは「うんうん」と嬉しそうに聞いていた。
家に帰るとケーキが用意されているのが見えた。ケーキには妹の名前が書かれた大きな賞状のチョコプレートが乗っかっていた。「ちょっとまってて」パパはそう言うとなにやら手元を動かした。ロウソクでも立ててるのだろうとマサ君は思った。
電気が消えパパがケーキを運んできた。ロウソクの火がゆらゆらと揺れている。テーブルにおかれたケーキを見ると、そこには妹の名前の横にマサ君とおじいちゃんの名前も書かれていた。
おしまい