チャンネル登録:
お話・読み聞かせ , ehonly , えほんりー , 絵本 , 読み聞かせ
年老いた犬の願いが叶うお話です。
犬は年老いてしまい、もう走ることが出来ません。でも、もう一度だけ大好きなリンちゃんとかけっこをしたいと、毎日神様にお願いしていました。
するとある日、リンちゃんが犬を抱っこしたまま散歩に連れて行ってくれました。そのまま走って、かけっこもしてくれました。このお話は、夢を叶える方法は一つじゃないという事、生き物を最後まで可愛がるということを教えてくれます。
リンちゃんのお家の庭には、もうあまり動けなくなった年老いた犬が住んでいました。
犬はいつも「あんなふうに、もう一度早く走れたらなぁ…。」と窓ぎわに座り、外にいる他の犬を眺めています。
年老いた犬は、足があまり動かなくなっていました。歩くのもゆっくりゆっくりです。
大好きなお散歩も、大好きなリンちゃんとのかけっこも、もうできません。
犬はリンちゃんが大好きでした。リンちゃんが産まれた日もよく覚えています。
パパとママがとてもうれしそうだったこと、リンちゃんの泣き声にびっくりして「ワン!ワン!」たくさん吠えたことも覚えています。
よくお昼寝も一緒にしました。おもちゃの取り合いもしました。リンちゃんのおやつを取ろうと喧嘩もしました。リンちゃんも犬が大好きでした。
お散歩にもたくさん行きました。公園に行くと、「行くよ〜!よーいドン!!」リンちゃんとかけっこをします。
いつも絶対に犬が勝ちました。それでもリンちゃんは「もういっかい〜!!」と嬉しそうにはしゃいでいます。
あれからどれくらい過ぎたのか、年老いた犬にはわかりません。ただ、足はあまり動かなくなり、リンちゃんは小学校のお友達と遊んでばかりで、年老いた犬とはあまり遊んでくれなくなりました。
それでも犬はリンちゃんが大好きでした。ご飯をもらう時、シッポを振って「遊んで!遊んで!」と言ってみますが、リンちゃんは犬をひとなでして部屋に戻ってしまいます。
だから犬は毎日神様に祈りました。「もう一度だけ、早く走れる足をください。もう一度、リンちゃんとかけっこをさせてください。」犬の足は、もう立つことがやっとなぐらい動けなくなっていました。
ある朝、「お散歩いくよ〜」リンちゃんの声がしました。年老いた犬は嬉しくて嬉しくて、シッポをフリながら一生懸命ゆっくりと立ち上がりました。
すると、リンちゃんはヒョイっと犬を抱き上げます。びっくりした顔で犬がリンちゃんの顔を覗くと「歩けなくても、抱っこすればお散歩に行けるんだよ♪」リンちゃんはにっこり笑顔で言いました。
いつもの散歩道。なんだか懐かしい匂いがたくさんします。お花の匂い、土の匂い、美味しいパンの焼ける匂い。ここのメロンパンはリンちゃんの大好物で、よくお散歩の途中で買って、公園で食べました。犬はほんのちょびっとおすそ分けをもらうのが大好きでした。
「ちょっと待っててね。ママにお小遣いもらったの。」犬はパン屋の前で降ろされます。しばらくすると、リンちゃんがメロンパンを買って出てきました。
「公園でたべようね」そう言って、また犬を抱っこします。
いつもの公園。いつものベンチに座ります。犬はリンちゃんのお膝に丸まりました。
メロンパンを食べながらリンちゃんがお話をします。「前はたくさんここで遊んだね。今はあんまり遊んであげなくてごめんね。足、動かなくなっちゃったら、リンが足になってあげる。だからこれからは毎日いっぱいお散歩しようね。」そう言って泣きそうな顔のリンちゃんは、メロンパンをちょこっとくれました。
全部食べ終わると「かけっこしよう!!」リンちゃんは犬を抱っこしたまま走り出しました。
犬の顔に風が当たります。周りの景色がどんどん過ぎ去っていきます。久しぶりに犬は風を感じました。なんて気持ちいいんだろう。犬はたくさんシッポを振りました。それを見てリンちゃんは「もういっかい〜!」と嬉しそうにはしゃいでいます。
足が動かなくても、走れなくても、犬は神様にお願いした通り、リンちゃんとかけっこができました。その日から犬は毎日リンちゃんとお散歩に行っています。リンちゃんが犬の足になってくれたからです。「神様ありがとう」犬は神様にお礼をいいました。
おしまい