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昔話「三枚のお札」の山姥が心優しかったらという視点から作られた物語です。
山姥は醜い姿だったため、坊主を驚かせないように姿を変え、食事を作るために包丁を研いだのですが、坊主は山姥を恐れ逃げ出します。山姥は坊主に栗を返してやろうとして坊主を追いかけますが、坊主は勘違いをしたままお札を使い逃げてしまったのです。
この物語からは、人の話は最後までよく聞きくこと、見かけで人を判断してはいけないことが学べます。
昔々、山奥に山姥が住んでいました。山姥の手足は枯れ枝のようで皺くちゃ、目はぎょろりと光り、口は大きく横に裂け、歯はギザギザと尖っていました。この山姥は自分の鬼の姿はとても嫌っていましたが、人に対して一度も悪さをしてないことが自慢でした。
山姥は夕暮れ時に糸車を回していると、誰かが戸を叩く音がしました。
山奥まで迷い込んでかわいそうにと山姥は思い、戸を開けようとしましたが、自分の鬼のような姿をみて、怖がらしてはいけないと思い、とっさに優しそうなおばあさんの姿に変わってから戸を開けました。
開けてみると、やんちゃそうな坊主が立っており、栗拾いに夢中になっていたら、こんな山奥に来てしまったのだと坊主は言いました。
山姥は、暗くなってからの山道は危険だ。一晩泊って日がのぼってから帰るといい。といい、坊主を泊めました。
山姥は口が大きいので普段包丁を使うことはありませんでした。なので、切られていない野菜がゴロゴロと入った料理でした。そんな山姥の料理は口の小さい坊主には食べにくく、半分ほどご飯を残していました。それを見た山姥は「朝ご飯はもっと小さく切った料理を出そう」と思いました。そして長い間使ってなかった包丁を取り出し、研ぐことにしました。
しばらくすると「ガタッ」と大きな音がしました。坊主が夜中に目を覚ましたようです。
こわばる坊主の顔を見て、山姥は本来の自分の姿を見られたことに気付きました。坊主は今にも逃げ出しそうな勢いで「おばあさん、小便いきたい」といい厠に走りました。
山姥は「とって食べるような真似はしない。夜道は危ないからここにいてほしい」と伝えるために坊主を追いかけました。
何時まで経っても厠から出てこない坊主を心配した山姥は厠のとびらを開けました。すると、中にはまだかと聞くとまだだと答える札はあっても、坊主はいませんでした。
怖がられているとわかった山姥はこっそり坊主に危険が無いように見守ろうとしましたが、坊主が栗を忘れていっていることに気付きました。
山姥は栗を坊主に渡すために追いかけ始めました。
もう少しで坊主に追いつく、そう思った瞬間、山姥の周辺が大水に襲われました。坊主が足を滑らさないようにと大水を飲み干しました。そして再び坊主を追いかけます。
すると山火事に遭いました。引火して坊主にけががあってはいけないと思い、山姥は飲み込んだ水を吐き出して火を消しました。
再び坊主を追いかけていると、山寺に着きました。ほかの人間に見られる前にと、「すみません…」と心の中で詫びを入れて、坊主を追いかけ、山寺に入りました。すると、中には和尚さんがいました。
「和尚さん、坊主はどこですかな?」
「山姥よ、坊主に何か用か。」
「実は、坊主が忘れていった栗を渡したくて、追いかけてきたのだ。」
「なるほど、そういうことだったか。それでは私が預かろう。」和尚さんは栗を受け取り礼を言うと、山姥は山へ帰っていきました。
山姥が帰ってからしばらくして、山寺の奥に隠れていた坊主が出てきました。
和尚さんはいまだに怖がりキョロキョロとあたりを見回している坊主に言いました。
「坊主よ、お前が採ったという栗を山姥からもらったぞ。話を聞くと忘れていったこの栗をわざわざ届けてくれたそうじゃないか。なのに勝手に勘違いして逃げ帰ってくるとは…」
和尚さんは続けていいました。
「いいか。話は最後までよく聞き、そして見かけで判断するものではない。お前も坊主の端くれなら、しっかりと相手を見極めろ。まだまだ修行が足りんな。罰としてこの栗は半分没収するぞ。」坊主はびっくりした後、悲しそうな顔をしました。
「ああ山姥がいいやつだとわかっていれば、栗が全部自分のものだったのに。」
怖がっていた坊主は悔しそうにつぶやきましたとさ。
おしまい