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子ぐまと動かない人形のちょっと不思議な友情のお話。
子ぐまは森で可愛い人形をみつけました。いくら話しかけても動かない人形に、子ぐまは每日会いに出かけます。ある嵐の夜、子ぐまが人形を助けに行くと大きな雷が落ちてきて…。
葉っぱが揺れて花が咲く、そんな春の森の奥。 小鳥の美しい歌声と、川のせせらぎを聞きながら、一匹のこぐまがちょうちょを追いかけ、スキップしながら奥へ奥へと進みます。
すると、大きな大きな木が一本、どん と生えてるその根元。そこに可愛らしい女の子の人形がポツリと一人で座っていました。「かわいい かわいい人形さん、どうしてあなたはここに居るの?」
静かに座る人形に、こぐまは言葉を続けます。「かわいい かわいい人形さん。どうしてあなたは眠っているの?」ジーッと動かない人形に、こぐまは続けて話します。「かわいい かわいい人形さん。今日はこんなことがあったんだ。」
それから何日も経ちました。ミンミンとセミが鳴き、森が夕日に染まる夏。こぐまは今日も森の奥に来ています。「かわいい かわいい人形さん。今日もボクのお話を聞いてくれてありがとう。またお話、しにくるよ。あしたもここで待っててね。」
その日は風がビュービュー吹いて、とても騒がしい夜でした。「かわいい かわいい人形さん。このままだと窓の外の葉っぱのように、ひらひらどこかへ飛んでいってしまう!」こぐまは窓から外を覗くと心配でたまらなくなりました。
おもわず家を飛び出して、まるで怒っているかのような森を、奥へ奥へと進みます。「かわいい かわいい人形さん。飛ばされてなくてよかったよ。もうすぐ雨も降りそうだから、ボクのお家へ一緒に帰ろ?」
こぐまが人形に手を伸ばそうとしたその瞬間、ドーン!と大きな音が鳴り響きました。とても大きな雷が、近くの木に落っこちたのです。打たれた木は燃えながら、こぐまの体を呑み込みました。
風はやんで、雨の音が聞こえはじめました。そんな森に、ポツリと一人、可愛らしい女の子の人形が座っています。「やさしい やさしいこぐまさん。ワタシはここに棄てられていたの。やさしい やさしいこぐまさん。いつも楽しいお話を聞かせてくれてありがとう。」
人形は、足元に倒れて動かないこぐまに続けて話かけました。「やさしい やさしいこぐまさん。あなたはこのまま眠ってしまうの?やさしい やさしいこぐまさん。あなたはひとりぼっちだった私の、たった一人のお友達よ。」人形は涙を一粒流しました。
葉っぱは色づき花は散る、そんな秋の森の奥。少し汚れた可愛らしい女の子の人形が、ポツリと一人で座っていました。小鳥の美しい歌声と、川のせせらぎを聞きながら、一匹のこぐまが怪我した足を気にしながら、ゆっくり奥へと進みます。
「かわいいかわいい人形さん。怪我はほとんど治ったよ。だけどね、今日はあの夜みたいに風が強いんだ。よかったら、ボクのお家に一緒にくるかい?」こぐまが人形に話しかけると、静かに座る人形は、黙ってコクンとうなずきました。
おしまい