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雪山で出会った男に恋をした雪女は、山の神にお願いして人間にしてもらいました。めでたく夫婦になり子供にも恵まれますが、決して破ってはいけない約束を男は破ってしまいます。そのせいで雪女は愛するもの全てを失ってしまうのでした。
雪女はどうして人を凍らせなければいけないのか、どうして男を助けたのか…。雪女の気持ちがわかる、切ない雪女のお話です。
昔々、山の奥深くに雪女が住んでいました。「なんていい天気!」ゴウゴウビュ~ビュ~吹雪いている空の下で、雪女は嬉しそうにはしゃいでいました。「気持ちがいいから散歩にでかけてみようかしら」
吹雪の山をつい時間を忘れて散歩をしていると、いつしか辺りは真っ暗。「あそこで少し休みましょ」近くに山小屋を見つけた雪女はキィと扉を開けて中に入りました。
真っ暗な小屋の中を進むと、突然足元にぼんやりと人影が現れました。人間に見つかると溶けてしまうと教わっていた雪女は、思わず冷たい息をフーっと吐いて人間を凍らせてしまいました。
すると「う…うわぁぁぁ!!」隣から男の叫び声が聞こえてきました。雪女は慌ててその男も凍らせようとしましたが、男はとても若くきれいな顔をしていたので、ひと目で好きになってしまいました
(あれ?私、溶けてない!人間に見られると溶けるという話は嘘だったのね…それにしても、なんて素敵な方なのかしら!) 一目惚れをしてしまった雪女はその男を助けることにしました。そのかわりに「決して雪女に出会ったことは話さない」と男に約束してもらいました。
それから何日たっても、雪女は男のことが忘れられませんでした。でも雪山でしか生きられない雪女は男に会いに行くことができません。そこで山の神様にお願いすることにしました。
「山の神様、どうかお願いです。私を人間にして、男の元へ行かせてください。」するとゴウゴウビュ~ビュ~吹雪の音に混じって、山の神の声が聞こえてきました。「雪女よ。お前の願いを叶えてやろう。ただし、男が約束を破ったら、お前は本当に溶けて消えてしまうだろう。」
「神様ありがとうございます!」雪女がお礼を言うと、真っ白な着物はみるみるうちに人間が着ている着物へと変わっていきました。嬉しくて仕方のない雪女は、さっそく男の家へと向かうことにしました。
雪女がコンコンと扉を叩くと、男が出てきました。雪女はお雪と名乗り「吹雪で迷ってしまって…」と話すと、「あ、あれ?いや…なんでもありません。うちでよければどうぞ」と、男は快く中へ入れてくれました。(なんて優しいのかしら)雪女はますます男のことが好きになりました。
男の名前はみの吉と言いました。山小屋で凍らせてしまったのはみの吉のお父さんだと知ったお雪は、償いの気持ちを持って、みの吉の世話を一生懸命しました。働き者のお雪をみの吉はどんどん好きになり、二人はやがて夫婦になりました。
子供も生まれ、お雪はとても幸せでした。ただ、みの吉は、実はお雪と出会った頃から雪女に似ていると思っており、時々、あの恐ろしい夜のことを思い出していたのでした。「お雪があのときの雪女なのか…ちゃんと確認したい。でも約束は守らないと。」そう思って話せずにいました。
ある吹雪の夜。どうしても我慢ができず、子供達が寝静まるとみの吉はお雪を呼び、あの日の出来事をすべて話してしまったのです。 お雪は自分が雪となって消えてしまうこと、そのせいで大切な子供達とみの吉とお別れになってしまうこと…いろいろ考えると、涙が止まらなくなりました。
泣きながら「どうして約束を守ってくれなかったのですか…」と話すお雪を見て、みの吉は(なんでそんなにも泣くんだ?)と、わけが分からずキョトン見ていました。 「そうです。私はあの時の雪女です。山の神に人間にしてもらい、あなたの所へやってきました。
でも、もうお別れです。約束を守ってもらえなかったので、私は雪になって消えてしまいます。どうか、この子達を幸せにしてやってください。」 そう言うと雪女は吹雪と共に消えてしまいました。
それから子供達はすくすくと立派に育ちました。でもみの吉は、おじいさんになるまでずっとずっと雪が降るたびにお雪を思い出し、泣いて暮らしました。そしてもう二度と、約束を破ることはありませんでした。
おしまい