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神社で出会った不思議なおじいさんの不思議な教えの物語です。
ある日、太郎の家のニワトリが逃げ出してしまいました。キイチと一緒に追いかけているといつの間にか見慣れない神社に来ていました。そこで出会った不思議なおじいさんに「待つことが大切」だと教えられます。それから大人になった二人は戦へと向かいました。何度も危ない目に遭いながらも、「待つ」ことで命拾いをした二人は、無事に家に帰ることが出来ました。
このお話から、本当に心が焦っているときは待つことが大切なのだと教えられます。
昔々、山奥の田舎に太郎という男の子が暮らしていました。ある日太郎は、家の庭で飼っていた大切なニワトリを逃がしてしまいました。「おーい!待ってくれー!お前がいないと卵が食べられなくて、かーちゃんに怒られちゃうよー!」そう言いながら必死にニワトリを追いかけました。
ニワトリはものすごい勢いで隣に住むキイチの家に逃げ込みました。「俺んちのニワトリが逃げたんだ!つかまえてくれ!」「よしわかった!」2人はニワトリを追いかけますが、なかなか捕まりません。
追いかけているうちに、いつのまにか古びた神社の中に迷い込んでしまいました。「あれ…こんな神社あったっけ…」周りが林で覆われているからか、昼間なのに神社は薄暗く、おばけでも出そうな雰囲気でした。
薄暗い神社に怯えながら2人があたりを見回していると、ニワトリが目の前を走っていきました。「こら待て!」急いで追いかけようとしましたが、誰かに腕を掴まれました。驚いて振り返ると、そこには神主さんのような白い着物を着た、やさしそうなおじいさんが立っていました。
「はなしてよ!ニワトリが逃げちゃうよ!」そう叫ぶ2人に、おじいさんは優しく言いました。「心が焦っているときは、追いかけないで、少し静かに待ってみなさい。待つことは、とても大切なことなんじゃ。必ずなにか意味がある。」
おじいさんの格好のせいか、神社の雰囲気のせいか、その言葉がとても正しく思えました。2人は黙ってうなずき、ニワトリを追いかけるのを止めて静かにじっと、その場で待つことにしました。すると走り疲れたのか、おとなしくなったニワトリが太郎の前に現れました。
それでもじっと待ち続けると、ニワトリは太郎の前で止まり、まるで捕まえてくれと言わんばかりでした。そっと抱き上げると、ニワトリは暴れることもなく、静かに腕に抱かれました。「おじいさん!ありがとう!」
太郎が振り返ると、おじいさんの姿はもうありませんでした。「あれ、おじいさんどこいったんだろ…」「神社の仕事に戻ったんだろ」不思議に思いながら2人は家へと帰りました。
それから何年も過ぎ、太郎とキイチは戦に行く時がやってきました。戦に行けば、いつやられてしまってもおかしくありません。お父さんもお母さんも、2人が心配でしかたありませんでした。「必ず、生きて帰ってきておくれ」「おう!!」2人は不安な気持ちを隠して、元気に出発しました。
戦場での毎日は、それはそれは大変な日々でした。ある時、2人は敵に追われて、近くの納屋に必死に隠れました。しばらくするとそこに敵が入ってきました。「もうだめだ…飛び出して、一か八か戦ってみるか!」
キイチが小さな声でつぶやいたその時、太郎はふと昔の神社での出来事を思い出しました。「心が焦っているときは、待つことが大事…そう、おじいさん言ってたよな…」太郎はキイチの腕を掴みました。「そう言えばそんなことあったな…」キイチもあのときの不思議な出来事を思い出しました。
「どうせやられるのなら、あの出来事を信じてちょっと待ってみるか」そう言って2人はまたじっと息を潜め、心を落ち着けました。するとどうでしょう。敵はたいして納屋を探すことなく立ち去って行くではありませんか。2人は待つことで、命拾いをしたのです。
しばらくしたある大雨の日。川を挟んで敵とにらみ合いになりました。敵はこちらへ攻めようと、どんどん川を渡ってきます。しかし、水かさが増えて流れが速くなってきたせいで、川岸にたどり着けずに殆どの敵が命を落としました。太郎とキイチの軍は、川を渡らずに雨が止むまで心を落ち着けてじっと待つことで、1人もやられることなく勝つことができました。
それから何度も同じように待つことで命が救われました。そのまま戦は終わり、2人は無事、田舎に帰ることができました。お父さんもお母さんも生きて帰った2人に大喜び。その夜はお酒を飲みながら、心が焦っているときこそ「待つ」ことには必ず意味があることを語り合いました。
おしまい