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欲しいものが何でも出てくる、りょう君の魔法のポケットのお話です。
夢のようなポケットですが、一つだけ出せないものがありました。
それは、天国に行ってしまったお父さんです。お母さんは、お父さんの写真や思い出の詰まったおもちゃなどを、りょう君のポケットに入れてくれました。
それからは寂しくなったらポケットをたたけば、お父さんとの思い出が飛び出してきます。ポケットは、毎日泣いていたお母さんとりょう君に再び笑顔を運んでくれる、本当の魔法のポケットになったのでした。
りょう君はとっても元気な男の子。「このポケットは、欲しいものがなんでも出てくる魔法のポケットです!」ある日、嬉しそうにパンパンに膨らんだポケットをママに見せてきました。ママがキョトンとしていると「ラムネ!」と言ってポケットを叩いて、ラムネをポケットから出してきました。
ポケットの中には、大好きなキャラクターのハンカチ、ビー玉、虫のゴム人形、チョコレート…りょう君の宝物がたくさん詰まっていました。「ほんと、魔法だね!」お母さんは嬉しそうなりょう君が可愛くて、クスクスその様子を眺めていました。
それからもりょう君は毎日のようにパンパンのポケットからいろんな物を出してくれました。休みの日にはパパにも「何がほしい?」と聞いて、ポケットから得意げに出して見せました。「どうだ!!」という顔が可愛くて、ママもパパもいつもクスクス笑ってその様子を眺めていました。
しばらくしたある日、突然パパが倒れて、そのまま天国へ行ってしまいました。ママもりょう君もたくさん泣きました。毎日毎日泣いて過ごしました。元気だったりょう君もあまり笑わなくなってしまいました。
ある時ママが泣いていると隣の部屋から「パシッパシッ」と音が聞こえました。
そっと部屋をのぞくと、りょうくんが泣きながらポケットを必死に叩いていました。小さな声で「パパ」と言いながら…。
その姿をみたママは思わずかけ寄りました。思いっきり抱き合って思いっきり泣きました。たくさんたくさん泣いて、少し落ち着いてから、ママはポケットに入るサイズのパパの写真を出してきました。
写真をポケットに入れてあげると、りょうくんは小さな声で「パパ」と言ってポケットを叩きました。写真を出すと「魔法だね」と言ってりょう君もママも目に涙を溜めたまま、にっこり笑顔になりました。それからママは、写真の他にもパパとの思い出のミニカーやゴム人形をポケットに入れてあげました。
その日から、りょう君は寂しくなると「パパ」と言ってポケットを叩いて写真を出しました。写真を見ると、パパがそこにいるような気がして安心できたのです。ミニカーやゴム人形もポケットから出して遊びました。楽しかった思い出がたくさん蘇り、少しずつ笑顔が増えていきました。
そんなりょう君を見たママも元気を取り戻していきました。いつでもポケットを叩いてパパに会えるようになった二人は、いつしかまた、笑顔の絶えない楽しい毎日になりました。パパとの思い出が詰まったポケット。りょう君のポケットは二人に元気をくれる、本当の魔法のポケットになりました。
おしまい