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心優しいおにぎり屋の主人に起こった温かいストーリーです。
まずしくて食べ物を満足に買うことのできなかった少年に、おにぎりとお金を分けてくれたおにぎり屋のご主人。
月日は流れ、ご主人は年老いてゆくとともに仕事を続けること、そして十分な収入を得ることががままならなくなります。
その時、かつての少年がおにぎり屋をおとずれ、ある提案をします。困った人を助けることは、未来の自分を助けることにつながることが学べます。
商店街に1件のおにぎり屋さんがありました。ご主人は毎日せっせと美味しいおにぎりを握ります。おかげでお店にはいつもお客さんが並んでいました。
ある日お客さんにまぎれて1人の男の子がおにぎりを手に取って、そのまま逃げようとしました。「こら!お金払いなさい!」近くにいたおばさんが男の子をしかります。
ご主人が男の子を見ると、着ている服はボロボロで、寒い季節なのに裸足でボロボロのサンダルを履いていました。「お店のものを取ったらいけないんだぞ」ご主人が話していると「ぎゅるるるる〜…」男の子のお腹の音が聞こえます。目にはいっぱい涙が溜まっていました。
ご主人はおにぎりを取ろうとした理由を男の子に聞きました。すると男の子は小さな震えた声で「妹にご飯を食べさせたいんだ…」と言いました。言い終わった男の子はポロポロと目から涙がこぼれていました。
ご主人は男の子から理由を聞くと、「これ、持っていきなさい。」と大きなおにぎり3つと、少しのお金をその男の子に渡しました。
男の子は「ありがとう」とご主人にペコリと頭を下げると、逃げるように走って行ってしまいました。
それから20年が経ちました。ご主人は今もおにぎり屋さんでおにぎりを握っています。しかし年をとってしまい、身体を悪くしたご主人は、前のようにたくさんは働けませんでした。
近くには大きなレストランもできました。
おにぎり屋さんは休み休み働いていたので、少しづつお客さんが減り、あまりおにぎりが売れなくなってしまいました。
おにぎりが売れなくなったご主人は、お金がなく、病院にも行けず、自分の食べるものもなかなか買えなくなりました。
苦しい思いをして過ごしていたある日、スーツを着た立派な身なりの男がお店の前にやってきました。
「悪いけど、今日は休みだよ。おにぎりの具を用意してなくてね。」ご主人が申し訳なさそうに男に話すと、「いえ、おにぎりもそうなんですけど、体を壊しているご主人の代わりに、私をこのおにぎり屋さんの主人にしてもらえませんか?」
男はニコニコしながらご主人に言いました。
「え…?このおにぎり屋の主人になりたいだって?君は何を言っているんだい?こんな店の主人になったって、なんにも得にはならないよ。」ご主人はビックリして男に言うと「得なんていりませんよ。ただ、あなたのお役にたちたいんです。」男は変わらずニコニコしながらご主人に言いました。
「こんな年老いたおじいさんの役に立ちたいだって?いったいどうして?それこそなんの得にもならないよ。」ご主人は不思議そうに男に尋ねました。
「覚えてませんか?」男はご主人に言いますが、ご主人は首をかしげたままです。「私は20年前、とてもひもじい思いをしていたときに、あなたに助けてもらったのです。」
ご主人はそれを聞いてビックリ。「あー!あのときの男の子か!ずいぶんと立派になったなぁー!!」懐かしそうに男を見つめました。
「私はあの時、あなたに助けてもらったおかげで、人の優しさと美味しいおにぎりに出会い人生が変わりました。」男は昔と同じように目に涙を溜めながら話します。「あなたにもらったおにぎりが本当に美味しくて、忘れられませんでした。大人になっても忘れられなくて、あの時いただいた味をたくさんの方に食べていただきたくて…
今は全国にお店がある、おにぎり屋の社長をしています。私がこのお店を切り盛りしますから、ご主人はゆっくり休んで下さい。」言い終わった男は昔と変わらず、ポロポロと目から涙がこぼれていました。
おしまい