チャンネル登録:
お話・読み聞かせ , ehonly , えほんりー , 絵本 , 読み聞かせ
新しい環境に馴染めないゆうた君のお話です。
ママは友達が出来るようにゆうた君に習い事をさせてみますが、ゆうた君はやりたがりませんでした。そんな中、ゆうた君が初めて自分からやりたいと言ったのが和太鼓でした。和太鼓の楽しさを知ったゆうた君は、懸命に練習をし、夏祭りでも楽しく演奏をすることができます。いつの間にかゆうた君にも友達のいる楽しい世界ができていました。
自分の世界を無理に広げようとせず、興味の持ったことを追求すれば、おのずと世界は広がっていくのです。
小学生になったばかりのゆうた君は新しい環境になかなか馴染めませんでした。朝の読み聞かせで学校に来たゆうた君のママは、独りぽつんと座るゆうた君を見て、切ない気持ちでいっぱいになりました。
ゆうた君は家でしょっちゅうママに抱きついて甘えました。
「ずっとずっと一緒にいてねママ。」「うん、でもママはゆうたよりずっと先に死んじゃうから、死んじゃうまでね。」「ママは死なないよ!100年も200年もずっとゆうたと一緒にいるんだ!」「ゆうたが100才になる時にはきっと、ゆうたとギューしたい人達といっぱい出会えるよ。まだゆうたは6年しか生きてないでしょ」
「違うもん。ママだけだもん。ママがいればいいもん。」いつもこんな調子です。ゆうた君はママがいればそれでいいと思っていました。
なかなか自分の世界を広げようとしないゆうた君を心配に思ったママは、友達ができるように習い事をさせてみようと考えました。
はじめは水泳教室。「行きたくない。」1回で行かなくなりました。次は英語教室。「つまんない」これもだめ。いくつか見学に行ってみましたが、ゆうた君はどれもやりたくありませんでした。
ある日、街のポスターを見てゆうた君が立ち止まりました。「ママ、これやりたい、なんかおもしろそう!」ゆうた君が指差した先を見ると、和太鼓のポスターが貼ってありました。ゆうた君がせっかく興味を持ったので、気が変わらないうちにと、ママは急いでポスターに書かれていた「メンバー募集」の電話番号に電話をしました。
次の休み、ゆうた君とママは和太鼓サークルの練習場にいました。初めは和太鼓の大きな音に圧倒されていたゆうた君でしたが、叩いてみると楽しかったのか、お兄さんお姉さんにまじって嬉しそうにはしゃいでいました。
次の練習も次の練習も、ゆうた君は楽しそうにでかけて行きました。ママはそんなゆうた君を見ると嬉しい気持ちでいっぱいになりました。その頃から少しつづ、ゆうた君がママに抱きついてくることが減りはじめました。
和太鼓を習い始めて少し経ったある日、ゆうた君は夏祭りで和太鼓を叩く事になりました。大きなお祭りで、遠くから見に来る人もたくさんいます。「そんな沢山の人の前で太鼓なんて…大丈夫かしら…」ママの心配をよそに、ゆうた君はとてもワクワクしていました。
お祭りの当日、ゆうた君は和太鼓を披露しました。みんなの掛け声に合わせ、夢中で叩きました。腕がパンパンになっても、少し間違えても、そんなの気にしてられません。とにかく必死に叩いて、目一杯和太鼓を楽しみました。そのおかげか、叩き終わると会場からは大きな拍手が鳴り響いていました。
ゆうた君は一番まえで見ていたママにピースサインを送りました。手にマメができても、疲れて起きるのが大変になっても、毎日必死に練習してきたゆうた君を思い出して、ママは思わず泣いてしまいました。ゆうた君に初めてママ以外の楽しい世界ができたのです。その成長にママはとても驚きました。
家に帰るとゆうた君はママにお願いをしました。「ママ、僕やっぱり英語も習いたい。和太鼓を世界に広めるんだ!」ゆうた君の世界はこれからもどんどん広がって行きそうです。ママは毎日甘えていたゆうた君を思い出して、クスクスと笑いながら頷きました。
おしまい