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「赤ずきん」の狼が人間思いの狼だったらという視点から語られたお話です。
狼は赤ずきんのよく似合う女の子が、怪我をした動物達の手当てをしているところを見て気になり始めました。
ある日、お腹がすいた狼がとあるお婆さんを食べた後、食べたお婆さんはその女の子のお婆さんだと気づきます。
女の子の大事な人を食べてしまった罪悪感で泣いて寝ている間に、女の子は猟師と狼のお腹からお婆さんを助けました。それ以来、狼は他の命をもらって食事できることのありがたみを実感しました。
昔々、森の中に小さな狼がいました。
この狼はまだ子どもでしたが、独りぼっちでした。なぜならお父さんとお母さんは熊に食べられて死んでしまったからです。 「こんな森の中で独りぼっちなんて寂しいよぉ。熊が憎い。熊がお父さんとお母さんを食べたせいだ…。」 と小さな狼は毎日考えては、寂しくなっていました。
そんなある日、小さな狼はいつものように餌を探していると、赤ずきんがよく似合う小さな女の子を見つけました。 その女の子は足を怪我していた鹿に包帯を巻いてあげていました。
「さぁ、鹿さん。これで歩けるかな?お大事にね!」
そう言って赤ずきんがよく似合う女の子は笑顔でどこかへ歩いて行きました。
小さな狼は生まれてからずっと他の動物と出会っては、食べるために追いかけるか食べられないように逃げるかのどっちかだったので、他の動物に優しくしているその女の子に驚きました。そして女の子が気になった小さな狼は後をつけてみました。
赤ずきんがよく似合うその女の子は森から少し外れたお家に入っていきました。
小さな狼が家を覗くと、そこには怪我をした動物たちでいっぱいでした。
そして女の子はどの動物にも優しい笑顔でお世話をしてあげているのでした。
1人ぼっちで寂しかった小さな狼は毎日毎日、女の子の住むお家に行っては、窓からその女の子の笑顔を見るのが日課になりました。
「あの女の子とお友達になりたいけど、でも僕は狼。怖がられちゃうに決まってる。」
そう思って小さな狼はいつもその女の子を眺めるばかりでした。
月日は立ち、女の子は身長も伸びて少しお姉さんになりました。
そして小さな狼はもう大きな大人の狼になっていました。
昔よりも動物を捕まえるのは上手になりましたが、女の子の笑顔を見に行くのは変わっていませんでした。 「この女の子はとても優しい心を持っているんだ。俺は家族はいないけれど、この女の子が危険になった時には助けてあげるんだ!」そう言っていつも陰で見守っていました。
しかしある夏、森に全然雨が降らないという日が何日も続きました。
そのせいで、いつも食べていた動物たちが全然いなくなってしまい、狼は腹ペコで今にも死んでしまいそうでした。
「お腹がペコペコでもう耐えられない、、。何か食べないと、、。何か、、。」
そうして餌を探していた時に、森の中に家を見つけました。
「人間の家だ!人間がいるはず!やっと食べ物を見つけたぞ~!」
狼は急いで家に行き、そこに住んでいたお婆さんをペロリと食べました。
「ふぅーごちそうさま!お腹いっぱいになったお陰で死なずに済んだぞー!」
上機嫌な狼はそのままお婆さんが寝ていたベッドでグゥグゥ寝てしまいました。
トントントン 。
誰かが扉をたたく音がして狼は目を覚ましました。
「お、どうやらまた人間が来たぞ。いいデザートだ。また食べちゃおう!」
そう考えた狼はベッドに潜り、お婆さんのふりをしました。
「おばあちゃん、こんにちは」 「よく来たねお入り」
狼はおばあちゃんの声真似をして家に招き入れます。
「おばあちゃん、そんなに布団に潜っちゃって。具合が悪いの?あら、なんて大きなお耳」
「お前の声がきこえるようにだよ」 狼は返事をしました。
「あら、おばあちゃん,なんて大きなおめめ」「それはな、お前がよく見えるるようにさ!!」
そう言って狼は目を大きく開きその人間を見ると、なんと小さい頃から見守っていたあの赤ずきんが似合う女の子でした。
「えっ、どういうこと?!」
女の子は腰を抜かして泣きべそをかきながら慌てていました。
逃げられそうもないその女の子は狼にとって良い餌でした。
しかし狼自身もショックを隠し切れませんでした。
「俺は、俺がずっと守り続けていたこの女の子の大事な人を食べてしまったんだ…。なんて事をしてしまったんだ…。」呆然としている狼を見て、女の子はすぐさま立ち上がり。逃げていきました。
狼は家に1人残され、泣き続けました。
「誰かのご飯は、誰かの大事な家族なんだ…。今までお父さんとお母さんを殺した熊を憎いと思ってたけど、熊も生きるのに必死だったんだ。」
狼は一晩泣き続け、朝になり、泣き疲れて寝てしまいました。
そこに猟師さんを連れたあの赤ずきんが似合う女の子がやってきました。「この狼が私のおばあちゃんを食べたんです!」猟師は大きなはさみを手に持ち、寝ている狼のお腹を切りました。すると中からおばあちゃんが生きたまま出てきました。
「おばあちゃん!!」女の子は泣いて喜びました。
「あー、よく寝たなぁ。本当昨日は取り返しのつかないことをしてしまったなぁ。でもおかしいな。昨日あのおばあちゃんを食べたはずなのにお腹が空いてるなあ。餌を探しに行くか。」
狼はそう言うといつものようにまた餌を探しに森を歩き始めました。
しかしその日から狼はご飯を食べる時にきまって必ず手を合わせて「いただきます」と「ごちそうさま」を言い、命を頂くことに感謝をしてからご飯を食べるようになりました。
おしまい