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これは、5歳のたろうくんに起こった、ある手紙にまつわる物語です。
重い病気を患ったお母さんからたろうくん宛に書かれた手紙にお母さんよりの文言がなかったため、たろうくんはそれを神様からの手紙だと思い込みます。
それをお父さんづたいに聞いたお母さんは、自分の命がこの先絶えてもたろうくんに手紙が届くよう、神様からの沢山の手紙を残したのです。間違いをたろうくんにとっての希望に変えたお母さんとたろうくんの素敵な物語です。
自然豊かでのどかな町に、お父さん、お母さんと5歳のたろう君という男の子の3人の家族がいました。たろう君のお母さんは、なかなか治らない悪い病気にかかっていて、ずっと入院をしていました。
ある日、たろう君は「ごちそうさまでした!」と急いでご飯を食べ終わると、お風呂にも入らずに突然机に向かい出しました。 お父さんが「なにしているの?」とたろう君に聞いてみました。すると「お手紙書いてるの!」と真剣な顔でなにか書いています。
書いた手紙をみると、紙いっぱいの大きな字で「かみさま おかあさんのびょうきを なおしてください!おかあさんと ずっといっしょに いたいです。ぼくは いいこにします!おてつだいも いっぱいします!おねがいします!たろう」と、覚えたてのひらがなで書いてありました。
それを見たお父さんは、必死に涙をこらえながら「きっと神様がこの手紙見てくれるよ」と優しくたろう君の頭をなでました。そして翌日、病院にいるお母さんにその手紙を届けました。
お母さんは涙ながらに手紙を読み、帰りに「たろうくんへ」と書かれた手紙をお父さんに渡しました。でも、お母さんは泣きながら手紙を書いたので、うっかり「おかあさんより」と書き忘れてしまいました。
翌日の朝たろう君は起きると嬉しそうにお父さんの元へ走ってきました。「お父さん!!かみさまからおへんじがきたよ!てがみのおへんじ!!」お父さんは「それはおかあさんからの手紙…」と言いかけましたが、たろう君は興奮していて聞いていません。
「『たろうくん、おてがみありがとう!!たろうくんのねがいをしっかりうけとったよ。おかあさんはたろうくんがいてくれてとてもしあわせだよ。いまのままで、いいこでいてね!』だって!すごいでしょ!!」たろう君は得意げにお父さんを見ました。
「かみさまにたのんだからきっとおかあさんはよくなるよ!!よかったー。このおてがみ、おまもりにする!!」たろう君は大事そうにその手紙を胸に当てて喜びました。喜ぶたろう君の姿をみて、お父さんもなんだかその手紙が本当に神様からの手紙のように感じてきました。
何日か経ち、お母さんの具合が急に悪くなったと病院から連絡がきて、お父さんとたろう君は急いで病院へ向かいました。 病院に着くと、お父さんはベッドで苦しそうなお母さんの手を握りました。
するとお母さんはお父さんの耳元で「これからはあなたが私の代わりにかみさまになっておてがみを渡してあげてね。」とつぶやきました。お母さんはたろう君が自分の返事を神様からの返事と間違えていることをお父さんから聞いていたのです。お母さんは泣いているたろう君の頭を優しくなで、「お手紙ありがとう。」と最後に小さくつぶやくと静かに目をとじました。
ベッドを片付けていると、枕の下から沢山のたろう君宛の手紙がでてきました。
手紙の裏には「かみさまより」と書かれていました。お父さんはその手紙をたろう君に渡し「神様はちゃんとお願いをきいてくれたよ。お母さんはずっとこれからもお前の側にいるんだから」と泣いているたろう君の頭をなでました。
おしまい